人間の体には約200個の骨と400種類以上の筋肉があり、これらが協力しあって体を支ささえています。骨と筋肉とは「けん」(かかとにあるアキレスけんがよく知られています)とよばれる部分でつながっていて、筋肉の力が骨に伝わることで体が動きます。たとえば「手をふってみよう」と考えたとき、脳の運動野という部分から「体を動かそう」という命令が出され、信号になって神経を伝わります。そして、その信号(電気のはたらきで伝わります)が筋肉にとどくと、実際に手が動きだします。
ところで、体が動くときに、いつも脳が命令を出しているわけではありません。たとえば、熱いものにさわったとき、思わず手が動くことがあります。この場合、さわったときに「熱い!」という信号が神経を伝わるのですが、脳まで行くのに時間がかかるため、そのと中のせきずい(背骨の中にあります)というところから、脳の命令を待たずに「手を引っこめろ!」という命令が出されます。このように、体には危険な状況にすばやく対応するために、考えるより先に体が動いて危険をさけるというしくみがあるわけですね。
また、自転車の運転や楽器の演奏などは、繰り返し練習することでいつまにか上手にできるようになります。この場合、小脳という部分に、何度も繰り返した運動の記憶がたくわえられるというしくみがはたらいています。さらに、心臓は毎日24時間休みなく動いていますが、頭の中で「心臓を動かそう」などとは考えてはいませんね。これは、心臓が「心筋」とよばれる筋肉で動いているからで、心筋には、自分の考えとは関係なく自動的に動き続けるという性質があります。
もしこのようなしくみがないと、危険をさけられなかったり、いちいち体の動かし方を考えることが必要になったりして、とても大変になりますね。