この質問へのもっともかんたんな答えは『子孫を残すため』ということになります。
ただし、生き物の中には、ゾウリムシのように体を分れつさせて増えたり、タケのように地下のくきをのばして増えていくものもあります。このようなオスとメスが必要のない増え方(無性生殖といいます)には、人の手で増える場合もあります。 春にきれいな花を咲さかせるソメイヨシノは、江戸時代につくりだされたサクラで、種ができてもけっして芽が出ないため、株を分けることで増やします。
その結果、日本中のソメイヨシノはすべて同じ遺伝子を持っていることになり、そのため春になって開花の条件がそろうと、南から北へと、そろって順番に咲いていきます。(これをサクラ前線といいます)
動物の場合も、オスとメスがそろわなくても、クローンという技術で子孫を残すことができるようになりました。このような増え方は、子孫をたくさん残すという目的にはとても有利な方法ですが、すべての子孫が同じ性質を持つことによるマイナス面もあります。
例えば、環境が変わると生き残れなくなったり、病気がひろまりやすくなる、といった点です。ふだんは分れつをして増えるゾウリムシも、ときにはほかのゾウリムシと合体し、遺伝子をやりとりすることで、環境の変化に対応しようとします。 ソメイヨシノはサクラの中では、じゅ命が短く病気にかかりやすい性質をもっています。
また、クローン羊として有名になったドリーは、若いときからすでに老化が始まっていたといわれています。
過去にも、オスとメスが遺伝子をやりとりすることで、さまざまな性質をもつ子孫が生まれてきました。その中には、新しい環境の変化にうまく対応した仲間がいたはずです。
親の世代とのほんのわずかなちがいが長い間つみ重ねられることで、生き物は進化を続け、その結果、人間も生まれました。
環境の変化にも対応できるじょうぶな子孫を残すためのいちばん良い方法、それがオスとメスによる遺伝子の分け合いだったわけですね。 もし、人もクローンで増えることになって、まわりが『私』だらけになった世界を想像してみるとおもしろいかもしれません。