形状記憶合金は、 もとの形をおぼえることができる金属のことです。 生き物ではないのに、形をおぼえるというのはとても不思議ですよね。 この合金(2種類以上の金属をまぜたもの)には大きく曲げても、 お湯につけると元にもどる性質をもっていますが、そのほかに、 超弾性効果といって、 大きく曲げて手をはなすとすぐに元の形にもどる性質があります。 身のまわりでは、携帯電話のアンテナや眼鏡のフレームに使われていますが、 これは曲げてもこわれにくい性質があるためです。
形状記憶合金には、いくつも種類があり、初めに発見されたのは金とカドミウムの合金ですが、 現在もっともよく使われているのは、チタンとニッケルの合金です。 ふつうの金属に力を加えた場合でも、それほど大きな力でないときは元の形にもどることができます。 それが、この合金の場合は、10倍以上変形しても元にもどることができます。 さてそれでは、どうして形状記憶合金にはこのような性質があるのでしょうか?
ふつうの金属は、原子が規則正しく並んでいます。 (これを【結晶】といいます)外から力がはたらくと、結晶のつながりが切れてばらばらになってしまうので、 元の形にもどることができません。 ところが形状記憶合金の場合は、原子と原子の結びつきによゆうがあるので、形がかわってもつながりがきれることはありません。
もう少しくわしく説明す ると、この合金は高い温度では、上下左右がしっかり結びついています。 これが低い温度になると(図の青い矢じるし)、左右はしっかり結びついたままですが、上下の結びつきはゆるいつくりになるので、 自由に変形することができます。(図の黄色い矢じるし) そして、変形したあとに加熱すると(図の赤い矢じるし)、元の上下左右がしっかり結びついた形にもどります。 このようにしくみで形状記憶合金は形をおぼえることができるわけですね。 ただ、変形に強いといっても、もちろん限度があります。 それを超えると元の形にもどらないので注意しましょう。