問題概要
横浜緑ヶ丘高校では、例年、資料を元にした小論文形式の特色検査が出題されます。
過去の問題例としては、「将来的に無くなっていることが予想される『はたらくくるま』は何だと考えられるか」「社会を運営・維持する上で、不可欠と考えられる役割は何か」など、広い意味での洞察力や知識、表現力が問われる問題が出題されています。
問題傾向分析
今年も、問題1は「防災用の備蓄品について」の出題です。
通常の災害備蓄品として必要なトイレットペーパーの個数などは、1回の使用の長さ・避難想定人数・標準的なトイレの使用回数・男女別の人数比などから算出することは比較的、容易にできます。問1は、常識的な思考力の問題です。
ただし、問2はどうでしょうか。「実際の災害を想定したときに、どのような要素」が考えられるか、それを加味した上で備蓄の必要量を考える問題です。
単純に「トイレットペーパー」を「トイレで」使用する場合でも、複数の事態は考えられます。3・11の時例では、断水に伴いトイレを流すことができないため「大便は紙に包んでバケツへ捨てる」ルールの避難所がありました。それだけで、通常の使用よりは多くの紙が必要になります。
また、衛生用品の不足も深刻でした。トイレットペーパーを代替使用しなければならないケースも考えられます。
それだけではありません。ヒントとして、飲料水だけで3リットル、生活用水はさらに多くの量が必要だと会話文の中に示されています。
手を洗う水がなく、雨が降り始めると一斉に屋根の下から皆が手を差し出して洗っていたり、食器を洗う水もなく、汚れを拭き取って何度も使用せざるをえないケース等もありました。
真夏の災害であれば、食中毒が多発していたでしょう。消毒用のアルコールと、トイレットペーパーがあれば最低限の衛生レベルが確保できる場面は多くあると考えられます。
避難所となった学校では、ひとつの空間に多数の人が長期、集まりますのでインフルエンザや風邪が容易に広まります。
汚れなどを拭き取るため、鼻紙として等、トイレットペーパーには多くの用途があります。
そういった、身近な非常事態を想定し、準備をする力、ありものを使いまわす力も、生きるうえでは重要なことなのです。
単純に、知識の詰め込まれただけの人物は求められてはおらず、生きる力のある人物が求められています。
また、問題2も同様に、実生活の中での教養・興味を問う問題です。
某「ブラタ○リ」というTV番組で、「崖会」という高低差・地形を愛でる人々の会は有名になりましたが、同様に改めて文化として見直し、多くの人の関心を集め始めていることがらは多々あります。今では日本を代表する文化となった浮世絵も、かつては庶民の娯楽・サブカルチャーの一種であったわけです。
広くものごとに興味を持ち、多角的な視点をもってさまざまなものを見ること。普段の生活が、実は、そのまま入試対策になりうるのです。
分析担当:畠中先生