小学生の英語学習!何をすればよい?
2020年から小学校でも英語が必修科目になりました。
すでにAI(人工知能)が翻訳をしてくれる現代。
英単語を丸暗記しているような勉強のしかたではない新たな学び方が求められています。
今回はそんな小学生の英語学習について、公立校での英語必修化以前から英語に取り組んでいる私立小学校を複数リポートした模様をお伝えします。
1.小学生の英検対策実践リポート!
英語の資格試験には英検、TOEIC、TOEFL、GTECなどさまざまあります。
その中でも、小学生の英語必修化で、ここに来て英検が注目されているのをご存知ですか。
1. 小学生の英検合格率
小学生の英検の合格率は約7割です。
各級ごとの合格率は以下の内訳です。
英検 4級 6割
英検 5級 8割
英検受験者全体に占める人数の割合
中学生 約4割
高校生 約3割
その他 約2割
日本英語検定協会データより
2. なぜ小学生が英検受検を目指すのか?
小学生の受験者数自体は多くはありません。
ただ、受けた子の合格率は高いのです。
小学生の合格率は約7割に達しています。
3級は中3レベル相当なのに、小学生で5割の合格率は驚きます。
英検以外の英語力診断テストでも小学生の受験熱は高いといいます。
英語教育の効果測定に役立ち、英語学習への動機付けにもなるため、このようなテストを活用している私立小学校は多いです。
鎌倉市にある大学附属の小学校もその1つです。
6年生の約半数が何らかの英検級を取得済といいます。
受検する児童も年々増えているそうです。
「英語教育の成果の1つとして英検合格を掲げているのは事実です」と英語科の先生は語っていました。
「ただし、それは目的ではなく、あくまでもプロセスです」とも続けます。
一部の小学校では英検合格に特化した指導で高い合格率を誇る事例もあります。
ただ、同校のアプローチはそうした極端な例とは異なるといいます。
3. 英語教育の質が学校選びを左右する!?
聞く・話す・読む・書くの4技能を大切にした英語学習を目指し、その途中の通過地点に英検合格を置いているそうです。
「本校の英検対策は『読むこと』から始まります。また、フォニックスもていねいに学びます」と先生は続けて語っていました。
※フォニックス・・・・・・英語のつづりと発音の関係性を学ぶ学習法
現在、英検5級に合格するには長い文章を読む力や、フォニックスの発音学習はあまり必要ではないのに、あえてそれを行う裏には、同校が英検合格「だけ」を目的とせず、広く英語を学ばせたいという思いがあるそうです。
3年生と4年生の週一回の英語授業では、必ず全員で英語の物語を音読するそうです。
希望者への追加指導にも熱心です。
年30回以上の放課後英語指導も実施しているそうです。
「卒業までに全員合格。4級3級にも、どんどん挑戦させたいですね」という熱い思いも先生は語っていました。
小学校受験の学校選びに英語教育を1つの判断基準になり得るでしょう。
2.低学年 英語教育に必要なこと!
小学校で必修化になる英語、率直な疑問として効果があるのだろうか。
今回、有識者に聞いた。
1.元校長に聞く! 理想の英語教育
神奈川県内新設の公立中高一貫校で、中3生の英検準2級合格率を9割まで高め、全国屈指の英語強化校に育て上げたある私立小学校の元校長は次のように語っています。
「文法面など教科的な部分では、小学生の英語学習経験はほぼ関係ありません。
中学から英語を始めた子の方が理解が早い場合もあります」
ただ、こうも語っています。
「発音や会話などコミュニケーションの道具として英語を使いこなせているかどうかという点では、幼小期の英語体験のある子が勝ります」
2.低学年からの英語教育とは?
元校長の話を聞いて思い浮かぶ小学校があります。
「好きな相手に気持ちを伝えたい」というモチベーションを重視して小学校低学年の英語教育に取り組んでいる学校です。
八景島や海の公園も近く、自然豊かな環境のある私立小学校です。
英語科の先生はこども園の英語指導も担当しています。
そこでは「英語の授業」というよりも、母親がわが子にことばを教えるような雰囲気でした。
子どものことばや思いを受け止め、心をつなぐことを大切にしているそうです。
低学年の授業をのぞいてみました。
教師があらかじめ用意した、たくさんの「素敵なもの」「楽しいもの」を児童に見せています。
見た側ではそれを誰かに伝えたい気持ちが沸々とわき上がるようです。
伝える「誰か」はここでは、宣教師の先生です。
ネイティブの英語教師でもある彼らは子どもたちに大人気です。
「これ先生知ってるかな?」
「先生は何て言うかな?」
「早く言いたい!」
ここに英語を話す必然性が生まれ、伝わった喜びが実感されるわけです。
これがさらに英語でのコミュニケーション意欲につながっていくのです。
また、同校では、敷地内に大学院までが隣接しているという環境を生かし、英語教育のスムーズな接続と指導連携が図られています。
園児から高校生までが参加する「英語フェスティバル」はその成果発表の一つです。
小学校内に留まらず、学園全体で可能な限り英語の学習環境を広げようとするこの取り組み。
数年後にどんな成果をもたらすかがとても楽しみです。
3.英語スピーチ習得法!
小学校での実際の取り組みをご紹介しながらから、効果的な英語の勉強法を考えます。
次に取りあげるのはスピーチによる英語の勉強法です。
横浜市のある私立小学校では、年1回英語のスピーチコンテストを実施しています。
1学期は下準備の期間だそうです。
スキットと呼ばれる二人一組の短い英語のやり取りを繰り返すのです。
各ペアの持ち味がでてくるのがコミュニケーションを通した言語の習得の良さ、楽しさでしょう。
2学期にスピーチコンテストは開催。
1. ルールがあるから工夫が生まれる!
コンテストルールは次の5つです。
② 基本になる文に「自分自身のこと」を織り込む。
③ 低学年は名前・年齢・誕生日に加えて「好きなもの」を言う。
④ 学年が上がるともっといろいろな文を足していく。
⑤ 6年生は最高で8文まで足してよいというルール設定。
こういうルールがあるからこそ、その中でいろいろ工夫する面白さがあるそうです。
たとえば、ある児童は動物が好きで、かわいさをどうやって伝えたらよいのか、真剣に考え、表現を工夫していたそうです。
2. これからの時代の英語力!
コンテストの審査観点は6つ。
② ジェスチャー
③ 発音
④ 笑顔
⑤ 視線
⑥ フィーリング
たくさんの聴衆の前で豊かな表情と全身いっぱいのジェスチャーでスピーチするそうです。
小学生のうちに体験してほしい学ぶことへの楽しさがスピーチ学習には詰まっていますね。
また、スピーチ学習を通して、これからの時代を生きるために初等教育で身につけてほしいと言われている表現力やコミュニケーション力もつきますね。
習慣的な学習が必要な発音のトレーニング。
これも初等教育から実践したい英語の勉強です。
小学生からのスピーチ英語学習は身になること間違いなしです。
4.ストーリー学習法 英検3級が読める!?
小学生の効果的な英語の勉強法。
続いて取りあげるのはストーリー学習法です。
1. まずは読み聞かせ!
藤沢市のある私立小学校では、英語は日本語と同じように言語の仲間であると位置づけ、意欲的に英語教育に取り組んでいるそうです。
子どもが、ことばを習得する際のプロセスに注目し、工夫を凝らしたプログラムを実践しています。
実際の授業はこんな感じに進みます。
② 児童はじっと耳を傾けます。
③ 途中、先生が一つの単語をわざと間違えます。
④ 間違えた瞬間、教室から「ダウト!」という声があがります。(「先生、気づいたよ」という合図です)
1年生の4月から徹底して英語の音声に触れていくそうです。
2. 800冊の英語絵本!
単なる単語学習やThis is a pen.
などの構文学習ではありません。
場面のあるストーリーを何回も聞き、その通りに声に出す練習をします。
繰り返すうちに子どもたちは全部覚えてしまうそうです。
公的機関の通訳や翻訳など実践的な英語の世界で活躍してきた経験の持ち主のこの学校の英語の先生によれば、この指導法で英検3級レベルの英文も言えるようになるというのです。
1年間続け、すらすら言えるようになった音を、今度は文字で読んでみるそうです。
慣れ親しんだ物語やフレーズを英文で目にすると、意外な発見や感動もあり、フォニックス的な学習効果が期待できるそうです。
小学生のうちは特に学びの中の楽しさを重視することは、とても重要なことです。
この学校の図書室には英語の絵本が800冊近く揃えられているんだとか。
小学生が英語に親しむためのしかけには楽しくなるストーリーの力を借りることが効果的です。
5.160時間 英語漬けの毎日を!
小学校での実際の取り組みをご紹介しながらから、効果的な英語の勉強法を考えます。
今回取りあげるのは英語の「王道の英語学習」です。
1. 英語4技能は外国人観光客に通用するのか?
② 話す
③ 読む
④ 書く
これらに英語のつづりと発音の関係性を学ぶ学習法「フォニックス」をからめたカリキュラムで英語教育に取り組んでいる小学校があります。
言語を身につけるために必要な要素をほとんど取り入れています。
いわば王道とも言える方法です。
この学校は自然豊かな箱根の山間、強羅駅からほど近いところにある私立小学校です。
周辺には外国人観光客が多く、英語を使う場面には事欠かかないそうです。
この小学校の英語カリキュラムには、具体的に次のものがあります。
② ネイティブの先生と日本人の先生のWティーチング制を採用
③ 週に1度の「イングリッシュ・デー」を開催
④ 毎日10分、とにかく英語に触れまくるというチャレンジ
⑤ 高学年は、箱根コミュニティーカレッジ主催「おもてなし英語プレゼン大会」への参加
2. 年160時間を英語漬けにする!
イングリッシュ・デーとは、朝の礼拝からお昼の放送、さらには英語以外の授業も可能な限り英語で行われます。
英語科以外の先生は大丈夫なのか、と気になりますが、児童達と楽しみながら英語に取り組んでいるそうです。
とにかく英語に触れまくるという方針は、新しい言語に馴染むには年間160時間、その言語に触れるとよいという定説をもとにしたチャレンジだそうです。
文科省は、指導要領改定で2020年度から小6で年間70時間、英語の授業必修化されるが、それをはるかに越える時間数だ。
授業のほか、児童が校内で過ごす時間は1年間に100時間、これを英語漬けにするそうです。
あとの60時間は通学時間の活用です。
全校児童に専用小型ICプレーヤーを配付し、毎日10分、英語のヒアリング。
通学時間にゆとりのある同校ならではの発想です。
箱根コミュニティーカレッジ主催「おもてなし英語プレゼン大会」をはじめ、英語能力テストへのエントリーなど取り組みが豊富です。
言語習得に効果的とされる様々なものを意欲的に取り入れている印象です。
「まずやってみて、合うものを見つけていく」というのが、この学校の方針です。
言語習得の方法には、様々な方法があるが、どれが自分に合っているか試すこと。
そして、十分な時間を使うこと。
王道とも言える勉強の姿勢がここにあります。