87% 英検準2級の取得率
横浜市立南高校附属中学校(港南区東永谷)といえば、2012年に県内3つ目の公立中高一貫校として新設され、厳選された優秀な教師が揃う学校としても注目の学校です。
前評判も高く、私立中学の難関校を蹴ってこちらに入学したという子も少なくないようです。
そのすごさは英検の取得状況からも垣間見ることができます。
中学3年生で英検準2級(高校中級程度)の取得率が87%を超え、英検2級(高校卒業程度)の取得率も20%にものぼるのです。
一般的な公立中学でも準2級に合格する3年生がいないわけではありませんが、人数的には1ケタ~10数人というところでしょう。
全国の中学生で見ると5~6%に過ぎないのではないか、と述べている資料もあります。
あらためて南附属中の87%という数字の高さに驚きます。
一体、そのヒミツはどこにあるのでしょうか。
1. 初代校長がヒミツを明かす
英語学習法を見てみたいと思います。
2017年6月に1冊の新書が出版されました。
著者の高橋正尚氏は南附属中の初代校長を務められた方です。
学校改革請負人 – 横浜市立南高附属中が「公立の星」になった理由 (中公新書ラクレ)
本の前半は南附属中で実践した独自の学習法の紹介、後半は高橋氏自身が同校の校長に着任するまでの経緯が書かれていました。
トライ&エラーの精神で同校を発展させるまでの苦労が記されています。
前半の学習法の中で、英語学習法についても触れられていました。
2. 驚異の英語学習法
南附属中の英語力強化を目指して、開校して間もなく導入したのが「1年間で教科書を5回繰り返し読む勉強法」です。
具体的には次の通りです。
《5ラウンド制 英語学習法》
1周目は 音声聴取
2周目は 音と文字の一致
3周目で 音読を始める
4周目は 穴開きの本文の音読
5周目は 教科書のストーリーを英語で説明させる
3. 教科書はコロンブス21
5周目が終わる11月頃には自分で考えたストーリーを英語で書く力がついているそうです。
「聞く、話す、読む、書く」の言語学習の4技能がバランスよく配置されているのがおわかりでしょうか。
この学習法は英語科教諭の一人、西村先生が、教科書の全体を通したストーリー性に着目して、一気に音声を聞かせて内容をつかませると良いのではないか、という思いつきから始まったものでした。
教科書は一般的に中学校で使われている「コロンブス21」(光村図書)を使用します。
「良いことだと思えばためらうことなく行動する高橋校長先生だったから実践できた」と西村先生は言っています。
4. コミュニケーション手段としての英語学習
英検の合格率の高さを冒頭で述べましたが、問題ごとの正解不正解の状況を調べてみると、文法や語彙の得点は全国平均とほぼ同じで特筆すべきものではないが、リスニングと
読解問題の正答率がずば抜けて高かったのだそうです。
ここからわかるのは、学問としての英語知識、つまり文法的な内容は高校生になってから身につければよく、まずは言語としての英語、つまりコミュニケーション手段としての「聞く」「読む」を優先的に身につけることが英語学習には有効だ、ということなのです。
「ラウンド制英語」は実践的な英語学習として、横浜市内の他の中学校や埼玉県熊谷市の中学校でも導入されています。
全国的に注目されている英語学習法と言えるでしょう。