今改めて考える!
オンライン授業とは
いったい何なのか?
国大Qゼミ
小学生のための教育ブログ
オンライン授業の
メリット・デメリットとは?
コロナ禍の影響を受け、様々な場面でインタンーネットを活用したオンライン化が進んでいます。
そんなオンライン○○と呼ばれるものの中には、オンラインの方が便利だから生まれたものが数多くあります。
オンラインストア、オンラインゲームなどです。
一方で対面や移動ができないための代用品として、やむを得ず生まれたものもあります。
オンライン会議、オンライン面接、オンライン飲み会などです。
この中で特にオンライン会議は代用品からスタートしたものの、今後は本家の対面形式の会議をしのぐ存在になっていくかもしれないと、このコロナ禍で多くの方が感じたことでしょう。
このオンライン会議と同じくオンライン授業も代用品から本家をしのぐ存在になる可能性を強く感じました。
そこで、今、しっかりとオンライン授業とは、いったい何なのかを改めて、整理整頓しておきたいと思い、今回文章にまとめました。
オンライン授業という言葉はコロナ禍のずっと前からありました。
ですが、テレビのニュース番組やワイドショーに頻繁に取り上げられるまでは、これほど話題になると誰が予想したでしょうか。
・日本のオンライン授業の普及率はOECD加盟国37か国中、最下位
・通信環境インフラ整備の遅れ
・オンライン授業で広がる教育格差
緊急事態宣言下、メディアに取り上げられる話題の多くはこういった批判的な報道ばかりでした。
では「withコロナ」の現在は、どうでしょうか。
学校が再開し、オンライン授業に対する世間の関心は薄れているのが実情です。
多くの塾では緊急事態宣言解除と同時にオンライン授業から対面授業に戻っています。
やはり、オンライン授業は対面授業の代用品に過ぎなかったのでしょうか?
自塾、国大Qゼミで、オンライン授業を本格的に始める決断はしたものの、コロナ禍の代用品と当初はとらえていました。
通塾不要で在宅受講が可能という点が唯一にして、最大のメリットと考えていたからです。
オンライン授業の品質は対面授業より劣るか、もしくは引き分けにできれば、ありがたいことだというくらいでいました。
しかし、自塾でオンライン授業を導入すると、対面授業よりもオンライン授業の方が優れている面も見えてきました。
受講生から「オンライン授業の方が先生が近い」「距離感がいい感じ」などの感想があがり、はっとさせられて気づいたのです。
加えて、ご家庭にオンライン授業に関する緊急アンケートを行ったところ、約80%の方にご満足いただけていることがわかりました。
アンケートの一部を紹介します。
塾に通えない状況になりましたが、早急にオンライン授業を始めていただけ感謝しております。
(小学生保護者)
可能であれば今後もオンライン授業を実施していただけると大変ありがたいです。
画面上で先生が名前を呼んで声をかけてくださると子どもはやる気が出るようです!
(小学生保護者)
振り返ると、自塾においては4/7(火)の緊急事態宣言と同時に双方向オンライン授業への切り替え準備に入りました。
保護者の協力も得て、ドタバタながら5日後にスタートを切ることができました。
講師も生徒も少し慣れてきた頃、「意外と使えるぞ」から「これはいい!」の声が出始めたのです。
十分に代用品として機能するという確信を持つことができたのでした。
オンライン授業の理解を深めるため、今回、異なる3つの学習方法を比較・説明し、それらのメリット・デメリットを示していきます。
その3つの学習方法がこちらです。
1.双方向オンライン授業
ビデオ会議ツールを使ったオンライン授業
2.動画配信
録画した授業を動画配信したもの
3.対面授業
通塾をともなった教室で行う授業
withコロナ期の新しい日常では、この3つの長所を最大限に活かしながら、短所を相互で補うようなプログラムを組み立てることが学習環境の充実には必須でしょう。
当然、目標や環境、それに該当学年、受ける科目や単元などによって、どの授業スタイルが適合しているのかは異なるにしても、これらの授業スタイルを組み合わせながら、withコロナ期の現在を生き抜いていく必要には変わりありません。
オンラインが、ここまで脚光を浴びた理由は通塾不要という特長を備えていたからに他なりません。
コロナ禍の下で何にも勝るオンラインのメリット、それがこの通塾不要な点でした。
いかに安全管理を徹底しようとも、家を一歩出れば感染のリスクは付いてまわるからです。
withコロナ期に入った今も、第二波、第三波と不安は一向にぬぐえません。
そういった状況下において、通塾不要という特長は引き続き高い価値があるものです。
また、今後は台風や豪雨など荒天時にも、このメリットは生かせるでしょう。
加えて、けがなどで移動に困難を伴う場合にも活用できるものと考えています。
ここで、ある大学関係者の話を紹介します。
オンライン授業を始めたところ、想定外のメリットがあったそうなのです。
そのメリットとは学生たちの授業への出席率の向上でした。
朝が弱く、1限目の講義にずっと出席できていなかったAくんという学生がいました。
そのAくん、大学の授業がオンラインに切り替わると、眠そうな顔ではありますが、1限目の授業に参加しているそうです。
早起きが苦手、ラッシュ時間の通学が苦手、学校の集団生活が苦手。
こんな学生たちが、当然たくさんいるわけです。
そんな学生たちにとっては、通塾不要で授業参加できるオンラインは、自分の生活に合った方法だったのでしょう。
そもそも、オンライン授業はいつ頃始まったのでしょうか。
オンライン授業について考え始めると、ふとそんな疑問がわいてきました。
理解を深めるために、歴史を簡単にさかのぼって知っておきましょう。
調べてみると、オンライン授業の始まりは1800年代から始まった通信教育にあるようです。
1800年代になると、郵便・電話などの通信手段が発達し、それにともない、教育の通信利用も開始されたのです。
ロンドン大学、シカゴ大学などではこの頃、最初の通信教育コースが開設されたのでした。
1900年代初頭になると、今度はラジオで大学の授業が放送されるようになりました。
そして時代がくだり、1950年頃には、大学でテレビ通信講座が始まり、単位認定も行われるようになります。
1970年代に入ると、コンピューターが開発され、オンライン双方向授業が可能になりました。
1990年代、インターネットが普及し始めると、オンラインでの学習管理システムの開発が盛んになります。
2000年代、インターネットは現代社会の重要な基盤として定着すると、ほとんどの主要大学でカリキュラムにオンラインのコースが追加されるようになりました。
2000年以降、個人レベルでもYouTubeを通じて教育ツールを提供するなど、さまざまな取り組みが始まりました。
特に有名なのが、アメリカの教育者で数学者でもあるサルマン・カーンのカーン・アカデミーです。
2010年代にはMOOCと呼ばれる誰でも無償で利用できる大規模公開オンライン講座が立ち上がり、世界中の学習者に提供するようになりました。
2020年の現在、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、Web会議ツールを利用したオンライン授業が多くの教育機関で開講されるようになりました。
このように、オンライン授業は、その時代の通信技術の発展や社会の状況に影響を受け、変化してきたのでした。
NII Today 第88号 古川雅子「オンライン授業の歴史と現状」
オンライン授業ですが、具体的にはいったいどのようなものなのかを、次から説明していきます。
オンライン授業は大別すると双方向オンライン授業と動画配信の2種類に分けられます。
まず、この2つ。
役割も効果も別のものであることを認識しておきましょう。
では、前者の双方向オンライン授業のメリット・デメリットを示しながら、その特徴を見ていきます。
コロナ禍下で、子どもたちの学習に一番必要だったものは何だったのでしょう?
それは学習内容や、その効果云々より、まず「規則正しい学びの生活を送ること」でした。
ここで自塾のアンケートを紹介します。
早い段階でZoomを使ったオンライン授業を取り入れていただいたので、学校が休校でも規則正しい生活ができ、本人も楽しく勉強が出来ています。
(小学生保護者)
ずっと家にいますので、つい生活が不規則になりそうなところをQゼミのオンライン授業を毎日行っていただけているお陰で規則正しい生活ができ、勉強面の不安も解消されています。
(中学生保護者)
このように、保護者からも生活にメリハリを持てたと、オンラインを支持する声がありました。
学校に行けないために友だちにも先生にも会えない。
そんな通学・通塾ができない状況で、子どもたちが勉強に対するモチベーションを保つことは、なかなか難しかったはずです。
自宅にはゲームやスマホ、テレビや動画、漫画など、ありとあらゆる誘惑が揃っているわけです。
子どもがそれらの誘惑に打ち勝って、通学・通塾できていたときと同じ時間だけ勉強をこなすことは、簡単なことではなかったでしょう。
この点、本来、双方向オンライン授業の弱点のはずだった時間的な制約が、逆に効果的に働きました。
この時間は、必ずオンライン授業を受けなければいけないという拘束時間ができたからです。
自塾を例にあげると、休校期間中、学校がありませんので、午前中から双方向オンライン授業を実施しました。
低学年の授業では、毎朝の始業に際し、モーニング・ミーティングを行いました。
外出自粛で身体を動かすことが少なくなっていることに配慮し、この時間にみんなでストレッチや体操をしたのです。
これなども双方向の特性を活用して、クラスの一体感、適度な緊張感をもってもらい、その日一日のモチベーションを高める効果があったと思います。
また、よい塾講師とは指導者というより、子どものペースメーカーとして伴走者に徹する講師であると言われますが、このコロナ禍で、よりそのことが明確になりました。
勉強をするのは、子ども自身なわけですから、いかに教えるのが上手でも、子どもの学びの継続を支えられなければ、成績は上がりません。
「このページ、来週までの宿題ね」と言って締め切り日を作り、次の週になったら、ちゃんとチェックして、叱咤激励してくれる存在が、やはり子どもには必要なのです。
こういう講師の存在がなければ、子どもの勉強に対するモチベーションと集中力はなかなか続きません。
こういった他者のまなざしを自分に取り込んでいくことで、子どもは自分自身を客観的にとらえられるようになるのです。
双方向オンライン授業は、この他者のまなざしを感じることを可能にした仕組みだと言えます。
双方向という点だけ見た場合の最大の長所は何でしょうか。
それは参加者同士で言葉のキャッチボールができることです。
その場で反応したり、答えてもらったり、先生や友だちと触れ合いがコロナ禍下の外出自粛制限中の子どもたちの心に、どれだけ重要だったか、はかりしれないものがあるでしょう。
このことは同じコロナ禍を経験した皆さんでしたら、想像が難しくないものと思います。
自塾で双方向オンライン授業を行っていると、受講生からこんな声があがりました。
「Zoomの方が先生が近くていい」
「先生との距離感がいい感じ!」
この意見を聞いて、内心はっとさせられたのを、よく覚えています。
どういうことかというと、画面越しの方が先生や板書との距離を近く感じられて、授業内容がよくわかるというのです。
そして、その一方で、実際に面と向かっているわけではないので、変な圧迫感やプレッシャーを感じることがないオンラインの方が授業の学習内容に集中できるというのです。
先生からも生徒の反応がよく見えるため、オンライン授業になったことで子どもたち一人ひとりの集中度合いの違いなどがよくわかるようになったという声もありました。
Zoomにはチャット機能という短いメッセージのやりとりが簡単にできる仕組みがあります。
このチャット機能を使えば、全員が同時に回答をすることが可能です。
先生の説明中にも質問が書き込めるので、対面授業だと手を挙げるのが恥ずかしいという子も気軽に質問ができるのです。
通常授業となった場合でも、ズームによる質問受け付けはしてもらえると、質問もしやすく理解が深まるように感じます。
(小学生保護者)
アンケートにも、このようなコメントが寄せられ、これもオンラインならではのメリットだと思いました。
オンライン授業になったことで、他の講師や保護者が授業を容易に見学できるようになりました。
これまで、先生と受講者の間でどんなやり取りが行われているのか、授業参観などで教室に行かないと、なかなか目にすることはできませんでした。
しかし、オンライン授業はシェアすることが容易なため、教育現場の弱点と言われてきた閉鎖性を取り払う役割も果たしました。
先生が授業を上手にできるようになるための近道は、他の先生に授業を見てもらうことだ、とよく言われます。
オンラインですと、保護者からも見られているわけで、先生はかなりのプレッシャーかもしれませんが、このオープンなやり方が今後の教育現場の変化には大切だと考えています。
双方向オンライン授業というと、今回のコロナ禍ではZoomが代名詞のように取り上げられましたが、実際にはZoom以外にも様々な双方向オンラインツールが使われました。
ここでは4大ツールと題し、以下、それぞれの特徴をまとめてみました。
ズームは無料利用可能な本格的なビデオ会議ツールです。
参加者は事前にシステムの登録の必要はありません。
そして、システムにサインインをすることなく、アクセスも可能です。
URLを共有するだけで参加可能な仕組みになっています。
無料版でも最大100人まで参加が可能です。
ホワイトボードという画面への書き込み機能なども共同で行えます。
Zoom公式サイト
チームスは、Microsoft社が運営するクラウドサービスの一機能です。
参加者はゲストもアカウント登録が必要です。
無料版は250人まで利用可能です。
WordやExcel、PowerPointといったOfficeを共同作業が可能なことがメリットです。
Microsoft Teams公式サイト
ミートは、Googleが開発提供しているサービスです。
Google カレンダーなどと連携できます。
また、リンクを共有するだけで会議をスタートでき、画面のレイアウトを様々切り替えるのも簡単です。
無料版での利用は100人まで参加OK。
会議時間は60分まで利用可能。
Google Meet公式サイト
シスコ ウェブエックス ミーティングは、世界で最も使われているWeb会議システムです。
こちらも参加者登録の必要はありません。
ホストユーザーのみの登録で無料版が最大100人まで参加可能です。
画面、ファイル共有、ホワイトボード機能、投票機能などもあります。
Cisco Webex Meetings公式サイト
ここまで、双方向オンライン授業のメリットをあげてきましたが、当然デメリットもあります。
今回の休講期間では、学校でのオンライン授業の導入遅れが指摘されました。
実際、休講期間に全国で双方向オンライン授業ができた自治体は、わずか5%という文科省の調査結果も話題になりました。
文部科学省公式サイト
学校に関する状況調査、取組事例等ページ
新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について(令和2年4月16日時点)参照
たとえば、自塾のある横浜市を例にとってみても、小中学生向けに教育委員会が作成した動画配信はされましたが、双方向オンライン授業が行われることはありませんでした。
その理由は全員が同じように授業を受けられる通信環境が整わなかったからと言われます。
このように、通信機器や通信環境、システムなどの影響をもろに受けやすい点が、オンライン授業のデメリットの最たるものでしょう。
対面授業は極端な話、紙と鉛筆だけあれば成立しますが、オンライン授業ではパソコン、タブレット、スマホなどの電子機器、ネットやWi-Fiなどの通信環境が揃っていなければ話にならないわけです。
それに加え、オンライン授業を行い痛感したのが、対話する相手と目と目を合わせることができないという点でした。
画面とカメラの位置が違っているため、いかなる双方向カメラでも構造上、目線を合わせることは不可能なのです。
相手の目を見て話しを聞くというのは、いわばコミュニケーションの基本です。
目を見ながら相手と話すことで意思疎通をはかり、信頼関係ができることで、話の内容理解は進むと考えています。
オンラインではお互い、自分の意図がちゃんと伝わっているのか、どこかで不安を感じたまま、やり取りしている状態が普通です。
そのため、オンラインでは感情の機微を必要としない情報や知識の伝達に偏りがちです。
これを何とか打開しようと、先生の中にはクイズタイムを設けたり、子どもの話を聞く時間を意図的に作ったりして、心理的なコミュニケーションを補っているのが現状です。
その他、思いつく双方向オンライン授業のデメリットを以下に列挙します。
双方向オンライン授業のデメリット
・時間的制約がある
・自分のペースで学習できない
・自分のレベルに合わないと無駄がある
・目が疲れる時がある
・事前準備に対面授業より多くの時間と労力を要するため、講師側の授業準備負担が大きい
これらのデメリットを見ると、特に大人数を相手にした双方向オンライン授業は、双方向の弱点だけがクローズアップされる最悪の方法なのかもしれません。
このように双方向オンライン授業を見てくると授業品質だけでも、うまくすると対面授業と引き分けに持ち込める可能性が出てきたと思っています。
双方向オンライン授業という代用品が、対面授業と同様の成果を出せるなら、これはとても有効な手段になると今は考えています。
ただ、オンライン信奉者というわけではありません。
オンラインで全てが成しえるとは到底思えません。
コロナ禍の教育界では、学びを止めないと盛んに叫ばれました。
しかし、実際のところ、子どもの学びへのモチベーションの維持・向上はしっかりなされたのでしょうか。
美辞麗句を並べていただけではいけません。
オンライン授業も今回一躍脚光を浴びましたが、まだまだ知見が足りません。
さらなる工夫、改善を試みる必要があるでしょう。
現在、自塾のオンライン授業が順調な成果をあげているのは、元々先生と生徒の間に信頼関係があったからだと思っています。
引き続き、信頼されるオンライン授業を行っていくには、講師側にも、それに応じた日々のスキルアップが必要だと考えています。
ここからはオンライン授業のもうひとつの方法、動画配信について解説します。
動画配信とは、録画した授業をYouTubeなどの動画配信サービスを利用し、受講者が視聴して学習する方法です。
では、さっそくですが、ポイントを見ていきましょう。
動画配信の最大のメリット、それは好きな時間に好きなだけ、授業動画を視聴できる点です。
このため、取り組む時間を自由に設定できるので、自分に合ったペースで授業が受けられます。
また、必要な部分だけを学べるので学習効率がとても高く、個人個人に合った学習内容を受講できます。
時間の制約がない動画ならではの学習方法を具体的にあげると、次のような5つの方法が可能です。
① 理解している部分は早送りで飛ばせる
② 理解が不十分な箇所は、もう一度聞き直しができる
③ 覚えるまで、何度でも巻き戻して繰り返し視聴できる
④ ノートの板書が苦手な子は、一時停止をして自分のペースで書き取ることができる
⑤ 変倍速機能を使って短時間にざっと内容を確認ができる
このような動画ならではの長所は特に知識伝達型の授業との相性がよいです。
たとえば、英語の文法や発音、数学・理科の公式理解などでは、理解や定着を徹底するまで行えるのです。
自分の学習理解に合わせた進度調整が行えるので、効果的な運用イメージとしては、テスト前の追い込み期に自分の苦手な単元だけをピンポイント復習することや、動画を視聴した後、双方向オンライン授業や対面ライブ授業で補講や発展的な学習を行う反転授業などがあります。
このように、効率的でムダのない学習方法が動画配信では可能になります。
目標が明確で、学習スタイルが確立し、自己管理が徹底できる受講者であれば、動画配信は双方向や集団で対面授業を受けるより、はるかに良いかもしれません。
オンライン配信される動画はWeb上で管理されています。
そのため、受講者がいつ動画にアクセスして視聴したのか、どのような進度で学習を進めたのかが自動的に記録される仕組みです。
このような学習履歴を教育ビッグデータとして収集し、個人個人の学習管理に活用することをラーニング・アナリティクスと言います。
毎日の学習進度チェックはもちろん、AIを利用して平均的な解答時間と受講者の進度を照らし合わせ、得意・不得意を分析して次に解く最適な問題を提案することができるのです。
たとえば、京都大学ではBookRoll(ブックロール)という学習履歴解析ツールを開発し、受講者がWeb上のテキストの、どこにマーカーを引いたかという細かい行動をライフログとして解析し、学習内容の理解度を測定しようとしています。
こうした動きによって、成績評価や適性診断を客観的データに基づいて行えるようになり、講師の授業以外の負担が軽減できると考えられています。
また、分かりづらい子どもの日々の学習状況を保護者がリアルタイムで把握できるというメリットもあるため、大いに期待されています。
京都大学公式サイト
BookRollページ
デメリットですが、動画配信はリアルタイムの制約がないため視聴の動機付けがありません。
そのためモチベーションの維持が難しいのです。
動画の先生は自分に向かって励ましてくれませんし、分からないところが出てきても、その場で質問ができないのです。
そんなリアルタイムではないというデメリットですが、コロナ禍以前からNHKや放送大学などのテレビ・ラジオの通信講座を上手に活用している受講者のノウハウでは、むしろメリットに挙げられていました。
どういうことかというと、放送時間にリアルタイム受講せず、録画・録音して受講した方が良いと言うのです。
こうした方が、モチベーションがアップするそうです。
なぜかというと、リアルタイムでは、その時間をやり過ごせばいいという気持ちがどうしても起こるそうですが、録画・録音すると、「この時間はこれをやろう」という自発的な意志が働くからだそうです。
このように、一概に良し悪しは決められず、使う受講者側次第のところが動画配信には大いにあるようです。
緊急事態宣言下の休校期間に学校の先生方が行った動画配信は涙ぐましい努力の賜物でした。
しかし、実際のところ、何割の子どもたちが視聴したのだろうかと疑問を持たざるを得ませんでした。
日頃、受講している先生の動画ならまだしも、まったく知らない先生の動画を見せられても、モチベーションはあまり上がらないでしょう。
誰なのか知らない先生の動画は宛名のない手紙のようだとも非難されます。
先生方の努力、取り組みをおとしめる意図は全くありません。
ただ、今回のコロナ禍下での急な学校休校で進度管理などが徹底されず、計画的な運用ができない状況では、動画配信は効果的ではなかったかと思っています。
ここからはオンライン授業の理解を深めるために、比較対象として通塾をともなう対面授業、つまりはこれまで普通に行われてきた教室で行う授業についてもまとめてみます。
知識を増やしたり、技能を身につけさせたりするだけが教育ではありません。
人間性を養い、子ども一人ひとりが持つ能力を引き出すことこそ、教育の本質です。
子どもが、よい先生と出会い、精神面を成長させ、その子の持っている力が開花したという例は数え上げれば切りがありません。
まして、学校とは違い先生を選べる塾では、この先生について学びたいと思えば、それが可能です。
自塾を例にしても、保護者に入塾理由を伺うと、「この先生だから学びたい」「この先生に子どもを託したい」というコメントを頂戴することが少なくありません。
よい塾講師というのは指導者然としていないものです。
あえて言えば子どもたちの伴奏者です。
子どもにやさしく寄り添い、時に厳しく接する存在です。
そして、子ども自身が目標に向かって、おのずと学ぶように導く先生が、よい先生です。
教え方が上手というだけではダメなのです。
生徒本人が教わったことができるようになるまで、サポートできる先生こそが理想的なのです。
多くの時間を一緒に過ごす中で、人としての立ち居振る舞いや行動、言葉などから吸収するということがあるわけです。
その意味で対面授業の意義は大きいのです。
欧米には、ピア・ラーニングという考え方が根付いています。
ピア=Peerとは「仲間」のことです。
仲間同士で切磋琢磨して、競い合い、励まし合える環境は何物にも代えがたいものでしょう。
英国のイートン校など、名門パブリックスクールは寄宿制が基本で、まさに寝食を共にする仲間が勉強を含め学生生活のモチベーションにつながっているのでしょう。
一緒に頑張ったり、励まし合ったりした仲間は一生の財産で、ここで知り合った同窓生や、その家族は卒業後も公私に渡って生徒の人生の助けとなる存在だそうです。
日本でも同学のコミュニティというのは慶應の三田会が有名ですが、社会に出てからも同じ学び舎で学んだということは代えがたいものでしょう。
これまでの学力というと「何を知っていますか?」「何ができますか?」ということを中心に問うものばかりでした。
このため入試問題も結局、知識量の勝負になっていました。
つまりは物知りで、たくさんの問題ができる子が合格してきたのです。
しかし、これからの時代に求められる学力は、このような知識の丸暗記ではありません。
これからの学力とは答えを導くプロセスをいかに論理的に積み上げられるか、異なる価値観を理解しながら、協力して集団活動ができるか、そして、無理矢理やらされる学習ではなく、自分から意欲的に行動し、試行錯誤することができるかなどの力です。
これらを伸ばす教育がいわゆる思考探求型学習、非認知スキル学習です。
こういった学習はクラスメイトと対話したり、一緒に生活したりする中でこそ身に付きます。
身体性や集団性がともなうものも多く、対面授業ならではの学習形式と言えるでしょう。
時間と場所が決まっている対面授業は、授業を受けるために通塾する必要があり、忙しかったり、遠かったりという場合、それだけでかなりの負担です。
自分の都合によって時間や場所を設定できないことが塾選びのネックになっているという方もいるでしょう。
ただ、一方で「この時間は塾に行って勉強するしかない」という拘束力がメリットになっている場合もあります。
withコロナ期において、対面授業を行う場合、ソーシャルディスタンスを保ち、マスクは当然、フェイスシールド、果てはビニールカーテンなどで仕切るなどの安全管理が必要です。
もちろん命を守るためにはこれらは当然のことですが、通塾の移動を含め、感染リスクは伴うわけです。
塾の集団授業カリキュラムは基本的に毎時間、どんどん進んでいきます。
そうすると、授業の内容が十分に理解できないようなことも出てくるかもしれません。
習熟度や理解進度は本来人それぞれ異なるからです。
本来、苦手科目の克服や学校の勉強についていけていないなど抱えている勉強の悩みは様々ですし、こういった学業不振の原因が科目や単元が不得意だからなのではなく、学校や塾での人間関係が気がかりで勉強に集中できないというお子さんもいます。
集団の中だと気後れしてしまい、つい分かったふりをしてしまっているということもあります。
コロナの不安がある中では、握手ひとつすることも、頭を撫でて褒めることも、感染リスクが付きまといます。
そんな中で行うガラス越しの対面授業の意義とはいったい何でしょうか。
今、わたしたちは授業にとどまらず、対面で人と会う場合、なぜそれを対面で行うのか、行う必要が本当にあるのかを常に自問していかなければならない世の中に変わってしまったのです。
文科省では現在、コロナ禍に対応した新しい教育のかたちを模索する会議が行われています。
会議の資料には、このまま何も手を打たないと2021年以降、日本の教育はこうなるだろうという青写真、未来予測が示されていました。
その一部を紹介します。
・大多数の教員は今までの遅れを取り戻すため、今まで以上の詰込み一斉授業を展開
・対話的な授業や探究学習は感染拡大リスクのため行われない
・ICT利用は、コロナ禍限りの臨時的運用で終わり、制度にはならず、大きく後退
・超財政難による教育予算の大幅削減
文部科学省公式サイト
新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第8回)会議資料
ここから読み取れるのは、教育のデジタル化、EdTech(エドテック)※に、立ち遅れている日本の現状をコロナ禍におけるオンライン教育導入の波に乗せて、一気に変えたい文科省のGIGAスクール構想※と、一方で、コロナ対応で手一杯な学校教育現場の様子が読み取れます。
時計の針が戻らない以上、このコロナの経験を生かす必要があると思っています。
コロナの終息を待ちながら、できないことに目を向けてばかりではいられません。
コロナ禍で浮き彫りになった問題をしっかりすくい取り、仕組み化して、できることをもっと生かそうと考えています。
そんな中、自塾では新たな一歩を踏み出しました。
その歩みを次の項ではまとめていきます。
※EdTech(エドテック)
Education(教育)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた言葉
※GIGAスクール構想
義務教育を受ける児童生徒のために、1人1台の学習者用PCと高速ネットワーク環境などを整備する5年間の計画
ハイブリッド授業とは、オンライン双方向授業、動画配信、対面授業という3つの授業形式を融合した学習プランです。
自塾、国大Qゼミが新しく提案するwithコロナ期の学習スタイルです。
これら3つの学習方法を融合することで、通塾生一人ひとりに最も適した安心安全な学習プランをご提供できると考えています。
3つの学習方法のメリットを掛け合わせることで、それぞれのデメリットを克服していく考えです。
例えば、通塾対面授業で新しい単元の解説授業を受けてから、定着のための問題演習を動画配信で視聴して、マイペースに進めていくことが可能です。
今までは、1日120分の通塾対面授業を行っていたものが、自宅で受講可能な双方向オンライン授業を導入することで通塾負担がなくなり、60分授業を2日に分けて行うことも可能です。
こうすると、週2回の授業の間に演習期間を挟むことができるため、週1回だった時に比べ、効果は倍増し、定着度が高まるものと考えています。
このような方法をブレンデッド・ラーニングと言いますが、学習方法の組み合わせ方で次第で、様々な可能性が広がります。
次に、もう少し具体的な例を示して説明します。
中学受験を控えた小学6年生の一日の授業スケジュールです。
・17-19時
通塾対面授業
「単元解説」
・19-20時
帰宅・夕食
・20-21時
双方向オンライン授業
「問題演習・解説・質問対応」
このように、通塾生には、これまでより早い時間に帰宅してもらい、夕食をご家族一緒にとっていただくことが可能です。
こうして気分転換を経て、寝る前までの時間に、帰り時刻を気にせずにもうひと頑張り、オンライン授業で力を出し切ってもらいます。
学習効果は、もちろんのことメリハリのある一日になることでしょう。
また、こうした授業形態は、withコロナ期において安全性の面でもメリットが高いものと思います。
そして受験対策においても、オンライン授業の導入により細分化されたコース編成が可能になります。
国大Qゼミは、大手塾でも個人塾でもない中規模塾です。
大手塾に比べて、一人ひとりへのきめ細かい対応には自信を持ってきました。
しかし、細分化されたコース設定には課題がありました。
今回、こうしてオンライン授業を併用することで格段に対応の幅が広がりました。
・きめ細かい対応と情熱の対面授業
・自宅が教室になる双方向オンライン授業
・マイペースでムダの無い動画配信授業
・食事の場での感染リスクを避けられる
・家族そろって晩御飯が食べられる
このように、ゴールさえ間違えなければ、教育のかたちは変わっても構わないはずです。
オンライン授業の弱みを克服し、強みをいかして質の高い学びを届けられるように今後も、改良の努力を重ねていきたいと考えています。
最後に、今回オンライン授業について整理しておこうと考えた背景を記します。
皆さんは、オンライン○○と言った場合、いくつ思い浮かびますか?
オンライン授業
オンライン会議
オンラインゲーム
オンラインストア
オンライン飲み会
オンライン診察
オンライン帰省
オンラインお見合い
オンライン面接 など
こんなところが、オンライン〇〇の代表例でしょうか。
以前からあったものもあれば、この緊急事態宣言下で生まれたオンライン〇〇もありました。
宣言下、毎日何度もオンライン○○を耳にしました。
そして筆者も、この期間の会議は、ほぼ全てがオンライン会議でした。
会議がオンラインになってみて、何の不自由も感じなかったばかりか、これまでにない利点、効果、発見が山ほどありました。
移動しなくていいのは最大の利点ですし、時間も短くなって良いのです。
対面よりも一時に全員の表情が見えます。
対面では生じやすい「場の空気を読む」といった余計な忖度が不要です。
何としても対面でやらなければならないこととは何なのか?
考えてみましたが、あまり見当たらないのです。
よくオンラインだと空気感が読めないと言いますが、合理的な結論を出すための会議に限った場合、正直、オンラインの圧勝ではないかと感じているほどです。
近いうちに会議はオンライン会議が当たり前になって、逆にオフライン会議なる言葉が登場するのではないかと思っています。
このように、目的が明確で時間や空間に制約がある場合、オンラインの効果が絶大だと身をもって感じました。
こういった自身の体験に即して、オンライン授業について改めて考えておきたいと強く思った次第です。
ところで今回、プロ野球、サッカーJリーグ、大相撲などが当初、無観客開催で再開されたのが非常に印象的でした。
スポーツ中継、これもよくよく考えればオンラインです。
でもオンライン中継とは言わず生中継、録画中継などと表現されています。
野球ファンの友人は、録画して試合後に結果を知らないまま見ていると言います。
その方が合理的だと言うのです。
つまらない場面は飛ばして見られ、見たい場面を何度も見られるからだそうです。
時間を有効に使えるというわけです。
これなど、動画配信授業のメリットとして記した早送り、巻き戻しで、自分に必要なところだけを選べる点を重視した観戦のしかたです。
しかし、生中継派の筆者は正直、野球ファン失格だと思ってしまいます。
だって、結果を知らなくても録画というだけでテンションが下がるではありませんか。
ここで自分が一生懸命応援しても、結果はもう出ているんだよなと考えてしまうからです。
つまり、生中継を見ながら自分も参加していることが大事で、自分の応援念力が勝利に貢献すると信じているから見ているのでしょう。
その最たるものが球場での生観戦です。
球場で見るよりテレビの方が大きく見えるのですが、でもあの歓声の中で一体感を持った生観戦の迫力には勝てません。
自分の歓声が選手にまで届くのではないかと思って声を張り上げるのです。
そんな自分の趣味の野球観戦ひとつ持ち出してみても、オンラインのとらえ方は人それぞれです。
さらに考察を深めていきたいと考えています。
参考文献
『月刊先端教育』6月号 (オンライン教育)
『月刊先端教育』7月号 (リアル教育の価値と格差)
●執筆者 荒屋剛志(あらやつよし)
(株)理究 取締役
学習塾事業部(国大Qゼミ)を統括
塾講師として35年間、指導の現場の最前線に立つ一方、
私塾各種セミナーへの登壇や文科省への提言など、教室の枠を超え、
業界で幅広く活躍中。