私の良さは“私”しかわからない
出題作品
出題校
麻布中学校、海城中学校
出題ページ
P23 夕方の美術室にひとりきり 私は私の滝を抱きしめていた。
麻布中学校、海城中学校 出題
あらすじ
東日本大震災直後と、その後の10年間の主人公 加藤伊智花(いちか)の足跡をたどっていく物語です。
ポイント
「滝の絵(2011)」からの出題です。
2011年3月、当時高校2年生だった伊智花は、絵画コンクールに出展すべく、大きな滝の絵を描き上げました。
ところが東日本大震災が発生したことで、コンクールで求められるテーマが変わってしまい、伊智花は困惑します。
前年に亡くなった祖母が愛した「不動の滝」を伊智花は力強く描きましたが、津波を連想させて不謹慎だととらえられてしまうのです。
結局、がれきの下から双葉が芽吹くようなわざとらしい絵が優秀賞となり、伊智花には全く納得がいきません。
表題はこの章の最後の場面の一文で、問題はこのときの伊智花の気持ちを答えさせるものでした。
世間の評価がどうあれ、自分の一生懸命描いた絵をいとおしく思うということ。
そして、私の良さは“私”しかわからない、ということをまとめます。
東日本大震災を独自の視点から描き、今までにない切り口で登場人物の心情を描写した本作は、難関男子校の入試問題として出題され、今後も入試問題として扱われる可能性があります。
執筆:国大Qゼミ中学受験コース 国語科 亀田 昌彦