2022年度中学入試から見える!算数でいま求められているチカラ

こんにちは。
中学受験コース算数科です。

今回は入試分析会の入試分析資料の編集担当として、2022年度入試から見える「算数でいま求められているチカラ」について、まとめてみたいと思います。

1.2022年度 中学入試

2022年度入試は大きな混乱なく無事に終了しました。

「無事に」という言葉がこんなにしっくりくる年はありません。

1月下旬にまん延防止等重点措置条例が発令され、本番がスタートする2/1は不安定な情勢の中での入試となりました。

面接試験(事前or当日)を課している私学は、ほとんどが中止となり、また、受験生がコロナに罹患した場合(あるいは濃厚接触者となった場合)の措置として、神奈川県私立中学高等学校協会が「共通追試(23校が参加)」を設定するなど、昨年同様に厳戒態勢での入試となりました。

このような状況の中で、Qゼミ受験生もとどこおりなく入試を終えております。
本年度は、男子・女子問わず、昨年に比べて第一志望合格率、難関中学合格率なども増加し、子どもたちの努力の跡、保護者のサポートを強く感じる入試でした。

中学受験コースでは、入試後、少しでも早く入試分析をご家庭に届けたいという思いから、毎年3月に「入試分析会」を実施しています。

この分析会は、入試動向をお伝えするとともに、算数科からの分析資料を配布して、どんな問題が出題されたのかを共有しています。
さらに、日頃の学習での留意点を明らかにすることで、保護者のみなさまへの安心感を提供することも目的です。

2.日頃の継続した学習姿勢が問われている

中学入試は知識の詰め込み教育であると揶揄された時代がありました(もしかしたら今も!?)。
確かに、膨大な範囲の学習を2~3年ほどかけて習得していくことを考えると、そのような印象を持たれても仕方ない側面もあります。

ひと昔前は、インプットした知識を猛烈にアウトプットしていくことを良しとする時代もありました。

ただ、今は入試が変わりました。
知識偏重型入試から思考型入試に変わってきています。

多くの情報量から必要なものを抽出して分析する、会話文の中から解く糸口を探るなど、知識を持っていてもそれを分析したり説明したりするチカラが問われる場面が少なくありません。

さて、それでも、思考型の問題が多くを占めるのかと言えば、そういうわけではありません。

問題の前半には、さまざまな単元の浅く広い知識を問う問題(問題を読んだ瞬間に解法が判明するような類)が出題されています。

この部分を確実に得点すれば、合格点に達する学校も数多くあります。

思考型入試に変わりつつあっても、それは基本を疎かにしてよいということではなく、日頃の学習の成果が問われていることに変わりありません。

知識の総量だけを見られて詰め込み式の学習と見られがちな中学入試ですが、実は、詰め込みよりも継続した学習を実行できるかどうかをはかる入試であると言えます。

中学入試がうまくいく子どもは、詰め込みの成果ではなく、自分なりの学習観を持っている傾向がある。
そこに求められるチカラは、実は過去から現在まで変わっていない。

3.題意を素早く正確につかむこと


文章題や応用問題を解くとはどういうことか、それは問題で示された情報を正確につかみ、問われていることに的確に答えるということです。

作業を必要とする問題では、どのようなルールのもとで作業を行うのかを確実に把握する必要もあります。

問題文で指示された通りに作業を行ってみて、その作業を通して気づくことや一般化できることをめぐらせていくチカラを要するということです。

最近の入試問題は、会話文などが素材となってリード文が長いことが一つの特徴で、テーマはシンプルなのに与えられる情報が多く、読み取りづらい傾向があります。

そういった問題は数多くあたれば克服できるのかといえば、そうではありません。

日頃の思考習慣が大切になります。

すぐに結論が出ないことに対して、自分以外の力をすぐに頼ってしまう子(例:すぐ先生にやり方を聞いてしまう、すぐ解説を読んでしまうなど)は、情報収集能力がうまく育ちません。

自分なりに考えてみたり、過去の何かを調べてみたりなど、当事者意識をもって行動できるかどうかがポイントです。

たとえ時間がかかったとしても、遠回りした分だけ経験を積み、より正確な知識を得ることができます。

算数でいえば、解説の考え方を鵜呑みにしてしまう傾向があるとしたら、それは他者に依存している裏返しとなるでしょう。

情報収集は、与えられた情報を能動的に受け取りにいけるかどうかで差がつく。
その情報を加工して次の新たな情報を生み出すためには、受け身の姿勢では使い物にならない。
積極的に試行して思考するステップが必要である。

4.作問者との対話を楽しめるかどうか

算数の問題を解くにあたって忘れてはならないことは「作問者が存在する」ということです。
入試形式(大問・小問のバランス、記述式or解答のみなど)や単元傾向、それこそ1問目の計算問題に至るまですべて、出題者の意図や思いが込められています。

例えば、計算問題の位置づけがあります。計算問題は「そのレベルの計算力に到達していないと合格できませんよ」というメッセージだと断言する指導者を散見します。
もちろん、そういった考え方もできますし、その意図で出題している私学もあるかもしれません。

私は次のような考え方もできると思います。
中学入試の計算問題は、大きな数で煩雑な計算をさせられることは多くありません。

敢えて複雑な計算問題を出題して、そこで得点できないようにするなどと低次元な発想を作問者がするはずがないでしょう。

経験上、その生徒が受験校としてとらえている学校の計算問題で、異常なほどできなくて困っているという生徒を見たことがありません。

これは、計算力は必要ないなどと申し上げているわけではなく、「計算は速く正確にできればメリットが多い」という理屈を前提にした上で、計算力にスポットライトをあてることによって算数力を都合よく表現するのはよくないと申し上げているだけです。

さて、大問には、(1)(2)(3)…と設問があります。

各設問の位置づけを意識的にキャッチできる子どもは解答能力が飛躍的に上がります。

例)
(1)…題意を把握できているかを確認するための設問
(2)…条件が加わるが、(1)と同じことをやっているだけの設問
(3)…(1)(2)の結果を活用して、次のステップにいくための設問

このような分析ができると、自らが持っている知識を活用するだけでなく、それを上手に運用することが可能になります。

多くの問題では、このような設問の流れ(問いストーリー)が存在します。問題を解きながら、このような背景まで見渡すことができると、作問者との対話を楽しめるのではないでしょうか。

入試問題はその学校が求める人物像を具現化したもの。
その作問者の意図を考えることで、もっと算数を楽しむことができるし、合格に近づくこともできる。

まとめ

「求められているチカラ」について、大きく3点を挙げてみました。
本年度の入試だけに特化した内容ではありませんが、指導者としてこれからも子どもたちと共有していきたいと思います。

本年度より、Qゼミ自作の算数教材「サクセス」がリニューアルされました。

求められているチカラを備えられるだけの要素が整った教材です。
新たな武器を兼ね備えて、2023年度入試に向けてすでにスタートしております。

また新たに始まる1年。
子どもたちと共に、私たちも学び続けてまいります。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

執筆者:森島 拓也
国大Qゼミ中学受験コース 教務責任者

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