2022年度入試はどうだったのでしょうか。
Qゼミ中学部入試分析室のスタッフが集合し、一斉に各教科の学力検査問題を解き、その特徴をまとめました。
中2生以下、これから高校受験をするみなさんの参考になればと思います。
英語
ポイント3つ
- 【リスニング】:選択肢の文が複雑になった
- 【語彙】:単語を書く問題がなくなった分、語彙レベルが上がった
- 【文法】:高校から中学3年に移行された文法事項が高確率で登場した問題数・形式・配点は昨年度と同じ
分析担当:石井 直樹先生
<総評>
去年の4月から教科書が変わり、英語は変化が大きかった。今回の入試は全体的な出題傾向はほぼ例年通りである一方、新たに加えられた学習項目や学習目的が色濃く反映された内容となった。以下、分野ごとに整理する。
【リスニング】
選択肢の文が例年と比較して複雑になった。音声を聞きながら複雑な構造の文を理解するのはかなり忙しい作業で、動詞が2つ以上ある文をいかに速く読み意味を整理するかという技術が必要になる。
【語彙】
新しい教科書では、正確に書ける「発信語彙」と、聞いて意味が分かるまたは読んで意味が分かる「受容語彙」の分類が導入されている。単語を書く問題を選択問題に形式変更したのは、受容語彙を増やすという学習方針を反映したためである。この出題形式の変更により、語彙レベルが多少上がった。
【文法】
現在完了進行形(問3-エ)、仮定法過去(問4-エ)、<make+人+動詞の原形>(問6-ウ-f、問8-ウ-c)など、高校から中学3年に移行された文法項目が直接得点に結びつくところで登場した。3年生で学習する文法は入試までに反復練習できる時間が短いので、英検受験などで先取りすることが望ましい。
【読解】
文章本文の語数は昨年とほぼ同じ。長い文章をストレスなく読む進めるために、読解問題を数多くこなしつつ1語1語よりも大意をつかむ練習を積み重ねることを心がけたい。問6のflyer(=「チラシ」)で3つ目の☆にあるような語数が多い文(この文は27語)を素早く理解するための対策にも有効であろう。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
今後の入試ではより幅広い語彙の知識が求められるので、耳と目で覚える→書けるようにする、という順序で単語学習に取り組みましょう。始めから書くことを目標とするよりも早くそして楽に単語の数を増やすことができます。また、長文を速く読んだり複雑な文、語数の多い文を短い時間で理解したりするには、日頃からどれだけ英語の文章を読んでいるかが勝負になります。単語や文法の学習とともに、英語の文章にできるだけ多く触れていきましょう。
数学
ポイント3つ
- しっかり対策を積めば63点がとれた
- 上位でも90点は厳しい
- 問2が1問減り、配点に若干の変化
分析担当:島津 寿理先生
<総評>
問1 計算 15点
問2 小問集合(基礎) 20点
問3 小問集合(応用) 25点
問4 関数 15点
問5 確率 10点
問6 空間図形 15点
問1と問2は確実に全問正解したい。問2は昨年までと比べて1問減り、その4点分が、問3に2点、問4(ウ)に1点、問6(ウ)に1点ずつ移動した。すなわち、難しい問題に配点が振られ、点数が若干とりずらくなっている。問3は例年通り、事前の対策が難しく、いわゆる自力が問われる問題。その中で、(ア)平行四辺形の証明と(イ)資料の整理については十分にとれる問題だった。ここで、10点確保したい。なお、(エ)については図形の外側に補助線をひく難問で時間内で解くのは厳しいか。問4は例年通り、(ア)(イ)はとりたい。上位校志望者は(ウ)もとりたい。図形の難問に比べれば、正解にたどりつく可能性が高かった。問5も例年通り。(ア)は確実にとりたい。(イ)は時間が確保できれば十分に正解できた。問6も例年通り、(ア)はとりたい。(イ)も対策を積み重ねていれば十分に解けるレベル。(ウ)は図形の外側に補助線をひく難問、時間内では厳しいか。以上、数学が得意でなくても対策をしっかり積めば63点がとれた。いっぽう、数学を得意科目としていても90点をとるのは難しかった。
(ア)は平行四辺形を使った合同の証明、
難しくはないが細かい計算を必要とする問題が多い。(ア)昨年と同様、証明が問3で出題。証明は選択式で易しい。例年受験生を苦しめる図形の面積比の問題とあわせて出題された。
(イ)資料の活用の範囲から、過去問や模擬テストなどではあまり見かけない「相対度数を縦軸にとった折れ線グラフ」が出題された。グラフから各階級の人数を出すために、相対度数の理解が必要だった。手が止まってしまった受験生はタイムロスが生じたようだ。(ウ)新傾向問題で、1次関数の応用問題だった。計算自体の難易度はそれほど高くない。
問4 関数 14点 例年通り。
問5 確率 10点 例年通り。確率ではここ数年、1年おきに図形がからむ問題と整数(約数や倍数など)に関する問題が出題されている。今年は整数に関わる問題の出題で、ていねいに数えることができれば得点できる問題だった。
問6 空間図形 14点
(イ)展開図のどこに点Dをとり、どう最短距離の直線を書くのかが受験生を悩ませたようだ。展開図上での作図ができれば、計算自体はそこまで難しいものではなかった。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
たとえ数学が苦手でも、入試問題傾向をつかんで解ける問題を確実に解いていけば60点以上とれるようになります。上位校志望で80点台を目指す場合、入試問題とその類題を徹底演習して、新出の難問以外をとりきれるようにしましょう。90点台を目指す場合は、新出の難問への対応力が必要です。全国の私立公立の入試問題まで手を広げてみましょう。
国語
ポイント3つ
- 漢字はすべて選択式に変更
- 文法/四字熟語の知識問題が問3の論説文の中で出題
- 出題順が変更。問3の論説文は記述がなくなり全問が選択式に
分析担当:畠中 真美先生
<総評>
出題の順番が変更になり、問2だった古文が問4に変更。問1で出題されていた文法問題は、問3の論説文の中での出題となった。難易度は変わらないが、例年との形式の変更に戸惑った受験生もいただろう。問1の漢字はすべて選択式になったが、正しい漢字熟語を選択する問題は容易ではなく、難易度も高め。記述形式でなくなったが、易化したとは言い難い。
問2の文学的文章は、主人公が学生の部活動の話のため、読みやすく平易。その分、問3の論説文の難易度が抽象的な言語論の為、高めになっている。学校の時枝文法の時枝誠記の言語過程説は一見、読みにくいが、丁寧に読めば解答に辿り着ける選択肢になっている。活字の分量が多い神奈川県の典型的な出題だが、落ち着いて設問の文意を汲めば解答に辿り着けた筈である。
問4の古文は、鎌倉中期の説話集である「十訓抄」からの出題。近年、多く出題されている近世の仏教説話系の古文に比べて、短文ではあるが文の概要が把握しづらい中世の古文である。文意が掴めず、苦戦した受験生もいただろうと思われる。対して、問5のグラフ・資料問題はテーマも昨今よく目にするSDGs関連の出題であり平易であった。
総文字数は約19047文字と昨年より145文字増量、全国平均が約7000文字・東京都で約12000文字のため全国TOPクラスの多さと言えるだろう。全体的に、問1の漢字・鑑賞文、問2の文学的文章と問5のグラフ・資料問題は易しく、問3の論説文と問4の古文が若干、読みにくくバランスを取っていた。平均点は例年並みかやや下がるのではないかと見込まれる。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
今後の受験生は、全国入試問題正解等で多様なレベルの問題に取り組み、演習量を積む必要がある。神奈川県の入試問題の特徴として、年度により難易度に若干の差はあるが、活字量が全国有数である点は変わらないので、必ず時間を測って読解スピードを身に着ける訓練は必須。また、漢字は記述ではないので疎かになりがちだが易しくはないので、漢字検定準2級程度の熟語力を身に着けた方が良い。
理科
ポイント3つ
- 生物・地学・物理・化学、各25点ずつのバランス型!
- 中3単元から40点以上の出題、偏りが見られる
- 基礎知識をどう応用問題で活用できるかが鍵
分析担当:伊沢 淳先生
<総評>
昨年との変更点は記述問題が姿を消したこと。それ以外は大幅な変更はなく受験生も比較的解きやすい問題と思われる。その為、平均点は昨年よりも上がるだろう。計算問題もほぼ無くなり、対照実験等の問題や問5(ウ)の様に基礎知識を使ってグラフを読み取る問題など思考力を試す問題が多く見られた。完答問題も昨年からさらに減り4問の16点分に留まった。完答問題は知識と思考力を問う内容がセットになっているため、正答率があまり上がらない印象を受ける。この16点分を取れるかが理科で高得点を取る鍵になりそうだ。
特に問1から問4までの小問は昨年と比べ単純な問題が多く解きやすかった為ここで36点を取りきることが肝要であった。
配点は3点×12問、4点×16問の計30問と問題数・配点ともに昨年と同じ。学年別配点は中1(31点)、中2(28点)、中3(41点)となった。昨年は各学年から満遍なく出題されていたが、一昨年と同じ傾向に戻り3年生からの出題が多く偏りのある問題となった。
光と音・化学反応式・植物と動物の体のつくりとはたらき、気象観測については4年連続の出題となった。ここ数年は各分野での出題単元が固まっている様子が見られるため、次年度以降も出題される可能性が高い。上記の分野は全て1・2年生からの出題の為、苦手な人は早めの準備が必要だろう。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
・高得点をとるポイント
基礎知識定着を100%を目指しましょう。暗記は最低限と考えて下さい。
その上で資料問題やグラフの問題などの解き方・考え方に慣れておきましょう。
・思考力を磨こう!
兎に角、早めの準備を心がけることが大切です。中3になってから頑張ればどうにかなると考えている人も多いようですが、それでは間に合いません。知識は短期間でも入れようと思えば入ります。しかし思考力は長い時間をかけなければ身には付きません。
社会
ポイント3つ
- 昨年同様に難易度は低かった。
- 時差の問題が無くなり、資料の読み取り問題に変わった。
- 記述問題が全くなくなり全て選択問題になった。
分析担当:冨田 豪先生
<総評>
問1世界地理 15点
(ア)地球の中心を通った反対側の問題:緯度は南緯と北緯の交換、経度は180度先の地点。地球の中心を通った反対側が想像できればできたはず。
(エ)米はアジア、小麦はヨーロッパ、残りはコーヒー豆とバナナ。南アメリカの割合が高いのがコーヒー豆。こちらは資料の読み取りと知識の融合問題。
問2日本地理 14点
(ア)(イ)(ウ)資料の読み取り問題。知識を問う問題が少ない。
問3古代から近世にかけての歴史 14点
古代(弥生最後~平安)中世(平安最後~戦国時代)近世(安土桃山~江戸)この時代区分が分かっているか鍵だった。
問4近代以降の歴史 15点
『資料 19世紀後半の東アジアを風刺した絵画』ア:日本 イ:清 橋の上:ロシア 魚:朝鮮という有名な絵画だが、これを知っているかどうかで大分違った。
問5経済・国際 16点
(オ)資料の読み取り問題。知識はいらない。
問6政治 13点
(エ)資料の読み取り問題。枢軸国の知識があるかどうか。
問7地理・歴史・公民融合問題
(ウ)資料の読み取り問題。知識はいらない。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
時差の計算問題が無くなり、記述問題も無くなりました。全て選択問題となりました。また、全く知識が無くても資料の読み取りから解ける問題が19点あります。資料から計算して解答を導く問題もありますので、根気強く取り組む訓練が必要です。しかし、残りの81点は知識が必要となります。特に歴史には資料の読み取り問題はありません。知識が無くても解ける問題が多くなっているんだという安易な考え方は危険です。知識をつけることは変わらず必要です。