ここ何年かで、すっかり1年の行事に定着した感じのあるハロウィン(10/31)。
そのハロウィンにつきものなのが、おばけや怪物ですね。
お子さんの中には、おばけの姿に仮装をされて楽しむ方もいらっしゃるでしょう。
今回は、そんなハロウィンにちなんだ絵本のセレクトをしてみました。
おばけが出てくる絵本2冊です。
おばけは想像上の存在ですね。
だから、キャラクターの容姿から性格、背景まで作者の想像力がいかんなく発揮された存在です。
ですから、作者がなぜこんなふうにおばけを描いてみたのかという視点に立ってお子さんと読書してみてはいかがでしょう。一緒に絵本を読んで、お子さんとキャラクターの面白さについてぜひ話してみてください。おばけの絵本だからこそ、作者の表したかったことが、浮き彫りになっているはずですよ。
こんなふうにおばけ絵本を読めば、身につくのは実は読解力なんです。
今回紹介する絵本に登場するおばけは、おばけなのだけれど、ユーモラスで、フレンドリーなのです。
作者が本当に伝えたいこと(ユーモアやフレンドリー)が、おばけのキャラクターたちから良く伝わってくると思いますよ。
おばけも心を持っていると想像力をはぐくむ
あんずゆき/作 あおきひろえ/絵
文溪堂 1,620円 2015年初版
全32ページ
自分のことを関西弁で語る憎めないようかいが主人公です。
ある時、地上に流れ星が落ちて来るのでした。
それを見つけたようかいは「あやしいやつ!」と言って、「あやしいのは おれさまだけで じゅうぶんや」と流れ星をとぼけた調子で最初非難するのでした。
「たすけてー!」「おねがーい!」と困る流れ星に頼られてしまうはめになった、ようかいは、今まで誰かを助けたこともなければ、お願いをされたこともないのです。
そんなようかいですが、なれないようすで流れ星を夜空へ戻すため、力を貸すのでした。
流れ星といっしょにいるうちに、ようかいの中で流れ星の存在がじょじょに大きくなっていきます。
それまで一人ぼっちで生きてきたようかいでしたが、流れ星を夜空にぶじに戻して、別れた後、別れを惜しんでいる自分につっこみを入れています。
そのようすが、ユーモラスでいながら切ないシーンです。
おばけは怖いものというイメージを変えるキャラクターです。
ここには、まったく得体の知らないおばけも心を持っていて、自分と変わらないんだと思いやる想像力がうかがえますね。
ダイナミックな絵本の技法が満載!
あまんきみこ/作 武田美穂/絵
教育画劇 1,080円 2005年初版
全32ページ
留守番をする幼い兄妹。
夜になり、二人で心細くしています。
そんな時、唐突におばけが窓から入って来るのでした。
そして、二人はおばけと一緒に夜空をかけめぐります。
最初、子どもとおばけの交流という、ありがちな設定の本だなあという印象でした。
ところが、子どもたちには大人気の一冊なのです。
そんな魅力はどこにあるのか考えました。
まず、大人には単純に感じるストーリーなのですが、そのおかげで、ストーリーを追うだけでなく、子どもに絵を見る余裕が生まれます。
星空の絵が見開きいっぱいに広がったり、おばけが紙面を縦横無尽に飛び回る様子が躍動感を感じる絵を存分に楽しめます。
また、ことばに着目してみましょう。
「ひゅうひゅうひゅう」
「おーい、おーい、おーい」
こういった繰り返しが多用されています。
こんなセリフを言葉に出してみるのが、子どもたちは大好きです。
あらためて考えてみると、単純明快なストーリーと、繰り返しのあるセリフという読書に引き込む王道ポイントがしっかり入っているのでした。
おばけを登場人物に使うことで、この作者が使いたかった絵本の効果がダイナミックに活用されています。