漢字の苦手意識を克服しよう!
「うちの子は漢字の読み書きが苦手で、この先これで大丈夫かな?」
「いくらインターネットが充実してすぐに分からない漢字も調べられる世の中でも、さすがに心配!」
こういう保護者の方は多いと思います。
そこで、今回は漢字の苦手意識を克服する勉強法を解説します。
漢字の書き取りは塾の宿題でも欠かせないものの一つ。
宿題の添削してみると、子どもたちが前日の夜、お母さんに言われながら、苦労して練習しただろうことがノートから想像できます。
書きなぐって急いで書いてある字の子、お母さんに厳しく「とめ・はね・はらい」を赤で入れられている子、そんなノートが提出されます。
そんな宿題の成果をはかる漢字テスト、ちゃんとやってきたのになかなか満点を取るのは難しいものです。
送り仮名を間違えたなど、惜しいところでできずに悔しい思いの子も多いはずです。
ところが、そんな中で毎週満点を取る生徒がいました。
その子にどんな勉強をしているのか聞いてみたところ、なるほど、それなら満点が取れるだろうという方法で勉強をしていました。
その勉強法に加えて今回は取り組みやすさ別に初級・中級・上級に区切って、7つの漢字勉強法をご紹介します。
1.漢字の成り立ちを覚える
小学1年生のとき、「山」や「川」などの漢字の成り立ちについて教わって感動した方もいらっしゃるのではないでしょうか?
けれども、その後に習う漢字について成り立ちを教わった記憶はあまりありませんよね。
当然、「山」や「川」だけでなく、漢字にはそれぞれ成り立ちがあります。
ひとつひとつの「文字」を「絵」としてイメージできる漢字の特徴を利用しましょう。
このような漢字学習に最適なのが、次にご紹介するような「漢字の成り立ち動画サイト」です。
このサイトでは小学1~4年生の教育漢字を中心に小学生で習う漢字の約6割の成り立ちをアニメーションにしてあります。
2.漢字を分解して覚える
ある芸人さんがユニークな漢字の覚え方を紹介したYouTubeが話題になったことがありました。
「鬱(ウツ)」「薔薇(バラ)」といった大人でも書くことが難しい漢字を取り上げ、紹介したことも受けた理由でしょう。
この芸人さんが紹介する覚え方ならどんな漢字も簡単に覚えられるようになると話題になり、今やその芸人さんが出した漢字の本や小学生向けのドリルは大ヒットです。
オジンオズボーン篠宮暁の秒で暗記! 漢字ドリル (TJMOOK)
さて、この芸人さんが使っている覚え方ですが、いたってシンプルです。
漢字を覚えようとしたとき、初級者が楽しくできるコツが次の2つです。
② 音を当てる
では、話題の「鬱」の覚え方を例にして、実際にその覚え方を見てみましょう。
木 (キ)
缶 (カン)
木 (キ)
ワ (ワー!)
凶 (キョウ)
、 (ワチョ!)
、 (ワチョ!)
、 (ワチョ!)
、 (ワチョ!)
ヒ (ヒ)
ミ (ミー!)
面白がりながら声に出して、書いていくと確かにちゃんと「鬱」という字が書けるのです。
シンプルで記憶に残りやすい方法です。
書き順にはこだわらず、とにかく字が書けるようにパーツに分けて覚えてしまうのです。
漢字の学習で最も大変な暗記を楽しく簡単にやってしまえるところがこの方法のすばらしいところですね。
そして、実に理にかなっていると思います。
漢字の暗記は一文字一文字を丸ごと覚えようとするから、なかなか頭に入ってこないのです。
この芸人さんの覚え方は部首やつくりに分けて難しい漢字を見てみようということなのです。
たとえば「醤油」の「醤」の字。
これも難しい漢字とよく言われますが部首に分解してみます。
※鬱・醤・薔薇 いずれも小学校・中学校では習わない漢字です。
醤
そうすると「将軍」の「将」の字。
十二支の「酉」(とり)の字。
この2文字が上下に合わさっているだけです。
このようにたいていの漢字はすでに知っている字の組み合わせです。
新しく覚える漢字や難しい漢字がこのようにできていると分かれば、覚えるのがぐんと楽になりますよね。
分けることはわかること、ということをよく言いますが、まさに漢字の暗記のコツもこれです。
「この漢字、どんな漢字に分けられるかな?」
「どんな、音を当てたら面白いかな?」
こんなふうにゲーム感覚で、友だちやお父さんお母さんと言い合いっこしながら、漢字を覚えることができそうですね。
3.書き順を覚える
今は漢字の書き順をアニメーションで示してくれるサイトやアプリがたくさんあります。
書き順の勉強は紙面上で見るよりもアニメーションの方が断然分かりやすくおすすめです。
テキストなどの紙面上ではたいてい、上から一画ずつ足していって最後のマスにでき上がりの漢字が書かれている表があります。
ところが、これが前のマスと次のマスとの間違え探しのようで大変分かりにくいものです。
一方のアニメーションは1つのマス目に一画ずつ足されていく様子が見られるので、一目瞭然で楽しいくらいです。
こういった作業的な部分は、いかに楽しく簡単に取り組めるようにするかでお子さんの負担感はずい分変わってきます。
書き順を何度も先生に指摘され、ご家庭でも直されて、漢字の書き取りがいよいよ嫌になる子は後を絶ちません。
挫折感を生むようなところを、軽やかにすり抜けられるようにしてあげることこそ、本来大人がすべきことでしょう。
そのためのデジタル使用は積極的になってよいところです。
目的はあくまでお子さんが漢字を覚えることであって、苦痛を乗り越える特訓をすることではありません。
書き順がアニメーションでわかるサイト
漢字の正しい書き順(筆順)サイト
漢字書き順辞典サイト
4.毎日短時間眺める
毎週行う漢字テストで、いつも満点を取る生徒がいました。
彼女の勉強法はこうです。
週5日間は毎日わずかな時間、テスト範囲の漢字を眺めるだけ。
一切書きません。
6日目のテスト前日になって、ようやく書き取りをするのです。
書き取りの方法はまず一度すべての漢字を書いてみる。
それで後は書けなかった漢字だけを何回も書いて練習するのだそうです。
有名な「エビングハウスの忘却曲線」というものがあります。
この研究でわかったことの1つが脳に長期間記憶を定着させるには睡眠をはさんで同じ内容を反復することが重要だということです。
短時間でも「毎日」眺めること。
それによって忘却を補うことができる。
記憶に残りやすくなる。
そして最後に書き取りをして定着度合いを確かめる。
前述の女の子の勉強方法は心理学的にも理にかなっていたと言えますね。
くれぐれも千本ノックのように、1日2時間3時間、たくさん書き取りをすれば漢字は書けるようになるという考え方からいったん離れることがお子さんにとって大切なことです。
毎日負担のないレベルで記憶に残るように眺めるだけのほうが効果的です。
漢字だけが宿題ではないでしょう。
まとまった時間は効率的に他の科目の学習にあてることをおすすめします。
5.暗記カードをつくる
なかなか覚えられない漢字がある場合です。
暗記カードに書き出して、リングでとじ、自分だけのアイテムのようにして持ち歩いてみましょう。
ポケットから取り出して眺めるだけですから、漢字練習のテキストを開いて勉強するより心理的な負担がなく見返す機会が増えて効果的です。
6.例文をまるごと書き写す
漢字の書き取りを行う場合、最も身になるのは、その漢字だけでなく、その漢字が使われている例文を丸ごと書き写すことです。
こうして、漢字がどのようなシチュエーションで使われるのかも一緒に覚えるのです。
漢字は同じ音で異なった字が多いです。
「つとめる」という言葉一つでも
・司会を務める
・東京の会社に勤める
このように例文を覚えて、頭の中で整理しなければ適切な字を、それぞれあてはめることはできません。
また、単純に漢字だけを覚えるより例文作りを行うと、イメージが浮かびやすく定着しやすいのです。
新しい漢字を覚えようとしたら自分でその漢字をさっそく使って短文を作るというのもそういった意味では有効な学習法でしょう。
ただ、当然、時間がかかる方法なので最初は覚えるのが難しい漢字だけから始めて、負担感がなくなってきたら宿題の字すべてで行うようにすることをおすすめします。
7.読書をする
最後に補足で上級編というよりは番外編の勉強法です。
子どもの頃、筆者は漢字の学習が得意な方ではありませんでした。
それだからでしょうか、漢字の読み書きに対するコンプレックスがなくなったきっかけをよく覚えています。
それは読書が楽しいことだと知ってからでした。
読書を通して自然と漢字に触れる機会が増えていくと、いつの間にか漢字への抵抗感がなくなったのです。
読書は文字や言葉への関わりを勉強でなく、楽しみとしてとらえることができた経験でした。
この関わり方が結局、勉強にも良い影響につながったわけです。
「急がば回れ」ではありませんが、漢字を覚えることが、結局、ものを考えたり、本を読んだりするためならば、その順番が逆になっていけないことはありません。
人によっては、筆者のように読書をすることが漢字と仲良くなるための近道になるかもしれません。
8.なぜ漢字の勉強をしないといけないの?
勉強法の紹介の後ですが、そもそもなぜ漢字を勉強しないといけないのでしょうか?
理由がわからないとやる気が起きないというお子さんのために付け加えておきます。
小学校3,4年生くらいになると、それまで漢字の勉強をおろそかにしていた子に現れる次のような現象。
音読の時間、これまで習ったはずの漢字が読めないため、つっかえ、つっかえしながらそんな子は読むのです。
この子が日ごろ、眺めるだけで文章を読めているわけでないことがわかる瞬間です。
漢字が読めず語彙が不足していくと、文章を読む際、言葉が分からないと誰かになんと読むのか、どういう意味かを質問をしながら、立ち止まりながらしか進まず、文章の中身をじっくりと集中して読むことができません。
ぷつりぷつりと途切れながら読むので、中身も面白く読めるわけもありません。
その結果、まず最初に国語が嫌いになってしまうのです。
国語嫌いは他の科目にも影響します。
算数や理科でも文章題がちゃんと読めていないことで、計算はできるのに、文章の意味がわからず、問題を解くことができなくなるわけです。
特に小学校3,4年生の教科書で抽象的な言葉が増えてくることもこの背景にはあります。
具体的なものを扱っていた低学年の内容から記号や概念など抽象的な思考が必要な学習が増えてきます。
これを「9歳の壁」と言うことがあります。
「9歳の壁」を越えるために:生活言語から学習言語への移行を考える
人間は「ことば」でものを考えていますから言葉の数をたくさん知っている人のほうが当然いろんな物事について考えられるわけです。
本をたくさん読んでいる子は頭が良いということをよく言います。
それはいろんなこと、いろんな言葉を知っているからです。
その肝心な本を読むためには字が読めなければいけません。
こういうわけで漢字が読めるということは学校の勉強というより、もっと広い意味でものを知ろう、考えようという知性を育むための基本のキなのです。
そして、言葉を知らない文章が読めないとなると、勉強全体に対して苦手意識を持ってしまう子になってしまいます。
つまり漢字の勉強はいわゆる読解力につながっていると考えればよいでしょう。
もっと広く言えば人とのコミュニケーションでも言葉は重要です。
漢字を知らない、言葉を知らないというのは人生にかかわることなのです。
ですから、漢字への苦手意識を克服はとても重要になってくるのです。
9.まとめ
最近、「竈(かまど)」や「禰(ね)」といった大変難しい漢字が書ける小学生が突如増えています。
これは大ヒットした「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭次郎・禰豆子の兄妹の名前だからですね。
一見しただけでは、どう書けば良いのかわからない漢字なので余計に興味が引かれ、調べて、我先にと書けるようになりたいという競争心をあおったのでしょう。
クラスの友だち同士で書けることを自慢気に語る子たちの様子が容易に想像できます。
鬼滅の漢字 【無限漢字編】 全集中!心を燃やせ!その難読漢字を読み切れ!
「好きこそものの上手なれ」のことわざはまさにこのことを言っているしょう。
結局、面白ければ放っておいても人間は取り組みます。
このあたりに勉強のコツがあり、やみくもにやると、ただの単純作業で苦痛になりかねない漢字学習を大人が関わることで、ちょっとの工夫で楽しい漢字タイムにしてあげることができるのです。
小学生のうちに覚える教育漢字は1026字あります。
今回ご紹介したアイデアや皆さん独自のアイデアでお子さんに楽しい漢字タイムを作って、一つずつ着実に覚えていきましょう。