【問1(共通)】
例年並みの英文 2問ある計算問題が解けたか
共通問題になってから、社会学(地理や経済)のテーマが出題される傾向がある問1。素早く読解処理をする必要があるため、世界地理において面積や位置関係、経済状況などは概要だけでもイメージ出来るようにしておくと良いでしょう。キャッシュレスの普及度のテーマでしたが、中国・韓国が高く、日本が低いことは常識と言えるため、本文を読まずとも判断できる問題がありました。さらに正誤8択問題がなくなったため、英語としての難易度は下がったと言えます。2問出題の計算問題は、組み合わせ(コインの裏表と同じ)と方程式(定価と利益)で、方程式の方は少し複雑な計算となっています。例年通りここで時間を短縮できる人が後半に時間を残し、高得点を狙えるという構図でした。
【問2(共通)】
易化された和文問題 計算だけでなく地理的な知識も必要
日本の水資源の現状と今後の課題を題材に、社会・数学の要素が含まれた特色検査らしい問題でした。黒田官兵衛の備中高松城攻めについては、岡山県の地理的な位置から川が南北のどちらに流れているかを判断する必要があります。複数の単位変換が必要なバーチャルウォーターの計算も時間に追われるとミスが起きやすい問題のため、注意が必要です。しかし、本文全体としては読みやすく、他の問題も必要なのは文章読解力だけなので、しっかり演習を重ねて準備をしていた受験生には解きやすかったのではないでしょうか。
【問3(選択)】
6ページに渡る長い問題構成 各科目からバランスよく出題
例年、技能科目に関する問題が含まれる問3、今年は美術の出題でした。テンガロンハットを円柱と見立てて計算する問題については、玉ねぎやチャーハンの体積を球に見立てて計算するという類題が過去に出題されており、対策済みの受験生も多かったと思います。しかし、正しく計算したときの結果が非現実な数値であったため、本文の最後の一文を読まなければ、計算ミスを疑って選択肢を変えてしまったかもしれません。今年度の問3は国語の読解力に比重があり、問2と似たような問題構成であったことも特徴的でした。全体的に問題を読み込む必要があったため、完答には時間がかかる問題でした。
【問4(選択)】
数学の立体・論理がメイン 後半2問の論理力を試される問題への対応力が鍵
日常の遊びや、多くの人が見たことがあるクイズ的な問題が題材に選ばれることが多い問4。今年度は「バケツ問題」という非常に有名な思考力クイズがそのまま出題されました。最後の16進法は難易度が高く、2進法の知識をベースに論理的思考が求められています。そのため、純粋に数学の問題演習をするだけでなく、応用問題に対して別解を考える他、論理的思考を鍛えるクイズのような問題にも取り組んでみると、良い訓練になるでしょう。立体についてはその規則配列や、隠れて見えない部分に対する思考などが必要なものの、難易度は高くありません。立体を苦手とする受験生は少なくないので、普段の勉強においても立体問題を避けずに力をつけていく必要があります。
【問5(選択)】
5題すべての問題が理科・数学の理系特化の問題
てこのつり合い・ふりこ・力学的エネルギーが題材の理科の問題が3題、三平方の定理と規則性の数学の問題が2題の構成です。理科の3題に関してはそれぞれの単元に対して曖昧な知識ではない、正しい理解力を有していれば解答にたどり着くことは難しくありません。数学の三平方については、車の左折という中学生が経験しているはずのない題材からの出題で、ヒントの図と与えられた長さから三平方のイメージは湧くものの、どこに使うかが思考のポイントになりました。こういった問題に対しては、「もし~だったら」という事から思考を巡らせると、解き方にヒントが隠れていることが多いこともポイントです。
【問6(選択)】
幅広い分野から難易度の高い思考問題
確率は樹形図を使用せずに解かなければ時間が足りないため、確率においては時短の工夫を常に意識しておく必要があります。地理の問題は知識よりも読解力が必要で、本文を読めば答えを導くことは可能でした。生物の問題は、「生物多様性を確率の計算式から考える」という非常に難解なテーマです。見たことのない公式に対して具体的な数値を代入し、ルールを把握しないと手がかりすらつかめずに終わってしまいます。「自分の持つ知識をベースに未知の問題に取り組む」というのは特色検査のテーマの一つです。とにかく多くの問題を経験し様々な問題解法の手段を日頃から学んでいくことが重要となるでしょう。
【総評と対策】
選択問題が一つ減るが、数学的な論理的思考力は依然として最重要
選択問題が一つ減り、さらに問6を選択する高校が2校しかなかったこともあり、同じ問題を選択する学校が多かったというのが今年の特徴です。ただし、全体的に数学の論理的思考力が重要であるという例年の傾向は変わっていません。
昨年度までの問5または問6に対応する問題が削除されている印象であり、全体的に例年よりも易化されていると言っていい問題でした。QRコードや水の貿易、ヤードポンド法や二つのバケツ問題など、比較的有名なテーマが論じられており、勉学を超えて幅広く物事を知っている人は問題把握に時間がかからなかったのではないでしょうか。ただ、特色検査で肝心なのは、「知識の量」ではなく「思考法の量」です。様々な考え方や問題への取り組み方を学ぶ上で、新しい概念にどんどんと触れていってほしいと思います。
尚、今年度は特色ではない5教科の英語も難易度が上がっており、特色であるかどうかに関わらず、公立入試に高い英語力が求められていることは知っておいてください。英検なら準2級を最低目標に、可能なら2級を目標として勉強を行ってください。
分析担当
川船先生
春山先生