問題構成
●共通問題
問1 英語の読解問題
問2 国語の文章読解
●選択問題
問3 国語(読解)、数学(計算)、理科(仕事)
⇒湘南・横浜緑ヶ丘・光陵・大和・横浜平沼・茅ヶ崎北陵
問4 国語(ことば)、社会(歴史)、数学(空間図形)、論理的思考
⇒柏陽・川和・多摩・大和・小田原・希望ヶ丘・横浜平沼・相模原・平塚江南
問5 数学(資料・空間図形・循環小数)
⇒湘南・横浜緑ヶ丘・横須賀
問6 理科(生物)、社会(気温・降水量)、数学(相似・円・三平方)
⇒横浜翠嵐・柏陽・川和・多摩・厚木・鎌倉・小田原・希望ヶ丘・相模原・横須賀・平塚江南・茅ヶ崎北陵
問7 数学(相似・円・三平方)、社会(地理)、論理的思考
⇒横浜翠嵐・厚木・光陵・鎌倉
<総評>
全体的な出題傾向や問題構成は昨年と似ています。共通問題である問1・2は昨年度よりも1ページ減ってはいるものの、計算・思考問題が複数あり、時間配分に気を付ける必要があります。問1・2の計10問は今年度もすべて5点配点でした。時間はかかるものの、後半の選択問題と比べると、手の付けやすい問題で構成されているため、ここで正解数を増やすことが重要といえます。
後半の選択問題については、数学の要素が強くなりました。特に問5は数学以外の要素がなく、特色検査の問題としては珍しいタイプといえます。また問6・7は相似・円・三平方の知識を用いて、スポーツや農業における最高効率を計算させています。
総合すると、計算力を要求する問題の減少が見られた昨年度に比べ、今年度は計算力を求められました。しかし、すべての問題を正確に計算する必要はなく、「割合・概数として求めて結論を出す問題」も存在しています。良い意味で手を抜くことで時間の確保をできた受験生が高得点を取れたのではないでしょうか。
各大問ごとの分析
●共通問題1(各5点×5問 計25点)
英語の長文読解です。5問中3問は英語の読解力のみで解くことが可能です。1問は社会の問題でもよく見かける表の読み取りで難易度は高くありません。残りの1問は1ドルの為替レートの計算でしたが、正確な値を計算する必要はなく、本文と選択肢から答えを絞ることができました。特色検査の問題は最初に出てくる長文を除くと、英語の要素を含む問題は多くありません。そしてこの英語長文の処理が時間確保で重要となります。日々の勉強で英語の長文に触れ、素早く処理する能力が求められているといってもよいでしょう。
●共通問題2(各5点×5問 計25点)
出題内容が説明文ではなく物語文になりました。その内容も江戸時代の暦に関する問題で取り組みにくさを感じた受験生は多かったと思います。問題も登場人物の心情変化(国語)、暦の計算(数学)、北の空の天体観測(理科)と複数の要素から構成されていました。5問ある問題の難易度に差があり。比較的解きやすい問題である(イ)(ウ)(オ)の3問を短時間で正解することが重要です。暦の問題については、例えば「1から100までの6の倍数の数」を求める問題に通じる要素があり(2の倍数+3の倍数-6の倍数)、この点に気づくと正解にたどり着けます。数学を得意としているかどうかで大きく時間配分に差が出たかもしれません。
●選択問題3 2点×1問(完答)、3点×5問(1問完答)、4点×2問 計25点
綱引きを題材に、勝つために最も効率の良い力のかけ方を理科の知識で考える問題です。前半に国語の知識の問題があるものの、全体としては理科の「仕事」がベースとなっています。作用・反作用や物体にかかる重力などを、あいまいな知識ではなく正しく理解しているかどうかを問われています。力をかける向きとその角度についてはスポーツで非常に重要な要素であり、今後も出題されやすい内容といえます。
日々の勉強において理科を単なる知識として処理するのではなく、「どうしてそうなるのだろう」と疑問に思うことは重要です。強引に納得するのではなくしっかり疑問解決をしながら取り組むことが、結果的に特色の問題につながっていくでしょう。
●選択問題4 2点×5問(1問完答)、3点×1問(完答)、4点×3問(1問完答) 計25点
昨年度の問4と似た構成で、文系(論理的思考)と理系(空間図形・パズル的思考)のバランスが取れている問題でした。前半は日常でも使われることわざが誤解されていることや国ごとに違うことを題材にしています。一部知識があるものの論理的に考えることで答えにたどりつくことができます。
空間図形は切断面に関する問題で2問構成でした。選択問題3と同様に1問目で考え方の手掛かりを与え、2問目でそれを応用することを求めています。
最後の対戦表はパズル的に要素を考えていくことで表を埋めていく問題です。やはり1問目で状況を整理し、応用の2問目につなげるという構成です。与えられた情報から要素を絞りこむときは、極端に大きい数値、あるいは小さい数値から処理していくことが重要となります。
●選択問題5 2点×1問、3点×2問、4点×3問、5点×1問 計25点
3種の問題すべてが数学でした。1問目の資料の整理は表の値を面積で表示するという一風変わった問題です。縦軸・横軸に数値がなく、グラフ下部は省略されているため、それぞれのグラフを比較することでしか正解にたどりつけません。この問題の導入として一つ前にゴールの成功率を計算させる問題がありました。どうしてこの値を求めさせたのか、出題者の意図を探ってみるのもヒントになることがあります。2問目は立体の縮尺を変えることで平面に表すという問題です。(ⅰ)はもととなる立体をあらゆる方向から考える必要があります。(ⅱ)は難しい問題ですが、八面体が四面体2つ分という点に気づき、前問の選択肢であるbを考えることができるかどうかが勝負です。3つ目の循環小数は教科書レベルの取り組みやすい問題でした。
前問は後問のヒントと呼ばれます。難しい問題で困ったときは一つ前の問題に手掛かりを求めてみるとよいでしょう。
●選択問題6 3点×1問、4点×3問(1問完答)、5点×2問(1問完答) 計25点
コルクの細胞、目の細胞についての問題は高校生物では必須ですが、中学生で知っている人はほとんどいないでしょう。このタイプの問題は知識ではなく、論理的な思考を要求しているので、初めて見る内容でもうろたえずに落ち着いて問題に取り組んでください。
後半の問題は円を描く導入があるものの、やや取り組みづらい問題です。円・角度が来た場合は円周角や相似が高確率でからみます。接線も合わせ、数学の知識を深く問われた問題でした。相似や円を単なる証明として勉強する頻度は高いのですが、長さを求める問題は演習量が足りない受験生が多いです。この辺りを勉強のポイントとするとよいかもしれません。
●選択問題7 2点×1問、3点×3問、4点×1問、5点×2問(1問記述) 計25点
図・表・グラフの読み取りがメインです。最初に主題された仕事の最高効率、最低費用というテーマは出題されやすい内容です。パズル的な要素の問題を短時間で正解にたどり着くためには極端な数値の処理を優先するとよいでしょう。円の問題は「接線」がポイントになることが多いです。数学の勉強においても「半径」「接線」を意識していきましょう。
後半の(エ)と(オ)の(ⅰ)は論理的におかしいものを要素から外していくことで正解できます。選択問題7の中ではこの2問が正解したい問題でした。最後の記述問題はグラフを比較することで、農村の人口が伸びず、都市の人口が増加していることを読み取ることができ、都市部への流入が想像できます。今年度の記述は正解しやすい問題だったといえるでしょう。
【対策】
特色の問題は知識一辺倒では対応できないようになっています。日々の勉強では言われたことをただ覚えていくだけでは足りません。自力で解くには難しい問題に挑戦し、思考力を鍛えることは大事です。また、疑問に思ったことはそのままにしたり強引に納得せずに解決することが重要です。
基礎力ではやはり英語が重要です。一つ一つの文を日本語に訳すのではなく、英語として理解できるようにすることで読解にかかる時間は飛躍的に短縮できます。読解、暗記すべてにつながる要素として、英語は声に出すことが重要です。普段恥ずかしくて声に出していない人も積極的に声に出しながら勉強してほしいと思います。また技能4教科の知識も問われる可能性は高いです。単純に日常生活につながるのは主要5教科よりも技能4教科です。そして、特色の問題に日常生活を題材にするものが用いられていることから全教科をバランスよく勉強してほしいと思います。
もちろん特色の問題独自の考え方や解法も存在します。いずれはそれらも経験しなければなりません。しかし、受験直前に闇雲に問題演習を行っても特色に必要な、「思考力・読解力・処理能力」は身に付きません。これらは特色の勉強だけではない普段の勉強の中でこそ養われるものです。普通、数学の問題では数学の知識だけで取り組みますし、社会なら社会の知識で処理します。一方、特色はほかのすべての科目で鍛えた知識を組み合わせて、戦う科目です。この知識の組み合わせ、あるいは取捨選択こそが特色の要といえます。要求されるのは知識ではなく、その知識の使い方です。まずはもととなる知識を身につけ、その上で特色の対策を行うようにしてください。
最後に、今年度はスポーツをベースにする問題が多かったように思われます。選択3の綱引き、選択4の対戦形式はサッカーで用いられる得点計算であり、問6はラグビーが題材に使われていました。スポーツにおける効率の良い体の使い方、戦略には数学の計算が必要不可欠です。その計算のほとんどは高校生以上の知識が必要ですが、中学生の知識で処理させる問題も出題は可能です。コロナの影響で2020年のオリンピックは延期となりました。スポーツを題材にする問題は次年度も出てくるかもしれません。遠投における投げ出しの角度、サッカーや野球でフィールドを最大限に生かせる選手配置など、興味のある人は少し調べてみるとよいかもしれません。