2021年度入試はどうだったのでしょうか。
Qゼミ中学部入試分析室のスタッフが集合し、一斉に各教科の学力検査問題を解き、その特徴をまとめました。
中2生以下、これから高校受験をするみなさんの参考になればと思います。
英語
ポイント3つ
- 問題数・形式・配点は昨年度と同じ
- 比較・受け身・現在完了・分詞など、基本の徹底を
- 読解問題は比較的身近な題材であり、読みやすい
分析担当:中野 亮輔先生
<総評>
出題形式は昨年度とほぼ同じだが、変更点としては①問1(ウ)NO.2適語補充に昨年度はなかった頭文字が加えられた、②問8文中の□に適する文を選ぶ問題がなくなり、内容理解の問題に変わった、③問6・8にて、ページをまたぐ場合でもそれぞれのページに注がついた、という点である。
③については、ページを行ったり来たりする手間が省けるため、読みやすくなった。難易度的にはあまりひねった問題は多くなく、しっかり対策してきた受験生は模試以上の点数が取れると考えられる。
問4に関して、(ア)(イ)(エ)はそれぞれ最上級、現在分詞、want + 人 + to構文の基本がおさえられていれば難なく解ける問題だが、(ウ)については受け身は導き出せても、その後のthrough the eyes~(~目線で)というなかなか見慣れない表現に戸惑った受験生は少なくないはずである。
会話内容を理解し、英語を推測する力が問われた問題と言える。問5条件作文に関して、How many + 複数名詞 + do + 主語 ~?が定着している受験生は、「How many students watch movies ~ ?」とdoを使わず下線部自体が主語になることに混乱したであろう。
問6~8の読解問題に関しては、例年通りの英語量で多くの時間を費やすことが予想されるが、問7は割と素直な問題で、順番通りに読んでいけば容易に答えが選べるものであった印象である。
時間配分としては問4までの文法問題にあまり時間をかけることなく、英作文・読解にじっくり取り組める余裕をいかに作るかが、高得点のカギとなる。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
入試に対応出来る英語力は一朝一夕では身につきません。学習指導要領が改訂され、入試の形式も変わることが予想されますが、1・2年生の内から分からないことを放っておかず、学年に応じた単語・文法事項の確実な定着をはかりましょう。苦戦が強いられる読解問題については、速読力の向上をはかるために英検問題集や参考書などで日ごろから英文を読む習慣をつけておくとよいです。まずは教科書を正確に読み込むところから。そうして積み上げられていく確実な英語力は、入試のみならずその後の英語学習の助けになるはずです。今の自分の弱点を分析し、その克服に向けた「継続的」な勉強を始めましょう!
数学
ポイント3つ
- 出題形式、出題数、配点は例年とほぼ同じ
- 基本問題をしっかり取り切れば60点は取れる内容
- 点数差がつきやすい問題は図形がからむ問題と問3の小問集合
分析担当:唐木 綾子先生
<総評>
問1 計算 15点 例年通り。
問2 小問集合(基礎)24点
例年通り。(カ)の円周角は、補助線が必要だが難しくはない。
問3 小問集合(応用)24点 難しくはないが細かい計算を必要とする問題が多い。(ア)昨年と同様、証明が問3で出題。証明は選択式で易しい。例年受験生を苦しめる図形の面積比の問題とあわせて出題された。
(イ)資料の活用の範囲から、過去問や模擬テストなどではあまり見かけない「相対度数を縦軸にとった折れ線グラフ」が出題された。グラフから各階級の人数を出すために、相対度数の理解が必要だった。手が止まってしまった受験生はタイムロスが生じたようだ。(ウ)新傾向問題で、1次関数の応用問題だった。計算自体の難易度はそれほど高くない。
問4 関数 14点 例年通り。
問5 確率 10点 例年通り。確率ではここ数年、1年おきに図形がからむ問題と整数(約数や倍数など)に関する問題が出題されている。今年は整数に関わる問題の出題で、ていねいに数えることができれば得点できる問題だった。
問6 空間図形 14点
(イ)展開図のどこに点Dをとり、どう最短距離の直線を書くのかが受験生を悩ませたようだ。展開図上での作図ができれば、計算自体はそこまで難しいものではなかった。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
数学は、新傾向の問題が数問出ることはあるが、大枠の形式や出題される内容は決まったものが多い。過去問演習をすることで、まずは決まった形式の問題を確実に取れる力をつけよう。その上で、目標点を取るための「解くべき問題」を自分で把握し、時間配分に慣れておこう。80点以上を目標とする場合には図形の問題を解く力が不可欠だ。問3の図形問題、問4関数の(ウ)、問6空間図形の(イ)と、差がつく問題は図形が多い。Qゼミの授業で様々なタイプの図形問題の演習でいろいろな考え方を試行し、解法パターンを身に付けよう。
国語
ポイント3つ
- 出題分野(知識・古文・小説文・論説文・グラフと表)は例年通り
- 文章内容を問う問題の配点がやや増加(+4点、昨年度の削減より戻る)
- 古文は神奈川の王道、今昔物語集からの仏教説話。
分析担当:畠中 真美先生
<総評>
昨年度より、文章内容を問う問題の配点が若干、増加した。それ以外は、例年並みの主題傾向を踏襲。
漢字などは中3範囲の出題がコロナの影響で無くなった為か、癖もなく平易。
古文は、神奈川県での出題が多い仏教説話。過去問でも多く見かける類型の内容で、設問も平易。
小説文は、時代がかった内容で、子どもが主人公の分かりやすい話ではない。ただ、正義と価値観が人の数だけ存在するという普遍性が高い内容。しかし、選択肢が2つまでに絞れても解答に辿り着くのに紛らわしい内容のものが複数あり、根拠をもって解答できるよう演習量を積んでおく必要はある。神奈川県の入試の最大の特徴は、その文章量。今年は18902文字を読み込む必要があった。難易度に対処するよりも、速読力と情報処理の速さが求められる。
論説文では、ネット上の情報と書籍の情報との構造と性質の差異を問う、フェイクニュースや情報過多の時代性を反映した素材文。書き抜きの語句がかなり近くにある等、出題内容としては平易といえる。
グラフ・表の読み取りはモーダルシフトという耳慣れないテーマであったが、二酸化炭素の排出量など、一般的な環境問題についての内容。総じて、例年並みか、例年より易しい出題。平均点も高くなるものと想定される。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
・速読力の養成 演習時は、必ず時間を決めて解く訓練をすること。時間をかければできる、というのは神奈川においては「できる」とは見做されない。
・過去問を解こう 以前とは異なり、多様な立場の主人公の小説文の出題、また、論説文も哲学・社会学・自然科学など多岐に亘る出題が見受けられる。全国入試問題を解き、入試によく出るジャンルの知識と傾向を体得していこう。
・漢字や文法の基礎はできて当たり前!失点のないよう定着を。
理科
ポイント3つ
- 生物・地学・物理・化学、各25点ずつのバランス型!
- 出題学年の偏りは多少緩和された
- 基礎知識+問題文をよく読む(読み落としをしない)
分析担当:伊沢 淳先生
<総評>
難易度・出題傾向ともに昨年とほぼ同等。記述問題は12字以内の記述問題が1問のみ。計算問題も複雑な計算をする問題はなく14点分の出題であった。完答問題は7問から2問減って5問。6択問題は昨年から1問減って7問となった。
完答問題が減ったことで平均点UPが懸念される。また、今年度は結晶の図や天気図が写真で出題されたところ特徴的であった。
昨年同様、問題量や文章量も多くはないため、時間的な余裕もあったと思われる。内容も「基礎」がしっかりしていれば答えが導き出せる問題が多かったため、受験生にとっては解きやすかった問題となった。
配点は3点×12問、4点×16問の計30問と問題数・配点ともに昨年と同じ。学年別配点は中1(38点)、中2(28点)、中3(34点)となった。ここ数年、出題学年の偏りが見られた理科だったが、昨年の中2(43点)配点から17点削減されたことで偏りが解消され、3年間の学習内容から満遍なく出題がされていた。
ここ数年出題の無かった、水溶液から16点分出題された。力学的エネルギー、生物と細胞、生物の成長と増え方は4年以上出題がないため、次年度以降警戒をしておく必要があるだろう。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
中1、2年生については応用よりも基礎知識定着を100%を目指しましょう。暗記は最低限の学習です。理科では表面的な知識だけでなく、実験や現象において「なぜそうなるのか」などの根拠がとても大切です。日頃の学校での学習においても答えの根拠を明確にしながら学習をしていく必要があります。
■高得点を取るために(特に中2生)
理科に限らずですが、中1中2の単元は新しい学年の内容が入ってくるにつれどうしても抜けてしまいます。しかし、継続的な学習をすることで抜けるペースを抑えることはできます。毎日の積み重ねが夏以降の学習の仕方に大きく影響します。理科が苦手な人ほど後回しにせず人よりも早めのスタートを切るようにして下さい。
社会
ポイント3つ
- 昨年に続き、全体的に難易度が下がったことで、平均点は上昇が予想される
- 地理・歴史・公民からバランスよく出題されるが、出題単元の偏りはあった
- 教科書や資料集の基本知識で対応でき、複雑な資料の読み取りもなかった
分析担当:田上 清貞先生
<総評>
知識問題、資料の読み取り問題共に教科書の理解を前提とした基本的な問題が出題された。以下、各大問ごとに特徴を述べる。
問1/2 地理
世界地理から正距方位図法を用いた出題がなくなり、平易な略地図からの出題になった。また谷川俊太郎の詩を通して時差の理解は問われたが、計算を要する出題はなくなった。資料の読み取り問題も基本的な出題であった。
問3/4 歴史
古代(平安時代まで)の出題が多くみられ中世・近世からの出題が例年より少なくなったのが印象的であった。また、第2次世界大戦後から現代までの出題はなかった。歴史上の出来事3つを並べ替える問題が2問出題されたが内容・形式ともに易しかった。「満州」国が語句の記述で出題された。
問5/6 公民
日本の伝統文化から「節分」が語句の記述で出題された。また人権と憲法分野からの出題が例年より多くみられ、近年多く出題された経済分野からは1問のみであった。薬事法距離制限違憲判決の事例を用いて、公共の福祉や人権の理解を問う出題がなされた。用語の単なる暗記ではなく、理解が求められた。
問7地歴公民複合
記述問題では大津事件をもとに司法権の独立が問われた。記述形式であったため、短文で正確な理解を記述することが求められた。
<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
今年は学校での学習時間の関係からか、出題単元の偏り(戦後や経済分野が例年より極端に少ない)があった。しかし今後も同じ傾向が続くとは考えずに教科書や資料集の基本的知識の習得を中心に、穴のない学習を心掛けるべきだろう。中学3年生は地理や歴史の復習を夏までに完全に終わらせ、秋以降、過去問や入試実戦的な問題を数多くこなすことで、出題レベルや傾向を把握して本番に臨むことが肝要であろう。